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白狼帝 ~異世界建国物語~  作者: ジャオーン
第二章 『建国編』
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第十四話 「精霊との邂逅Ⅱ」

「妾の領域に土足で入るだけでなく、傲慢にも侵食しようなど獣風情が随分と舐めた真似を――。妾を数千年生きた精霊と知った上での狼藉であろうな」

「クハハ。生きた年数で脅すなど精霊の世界にまでも年功序列の考え方でもあるのか? それは随分と俗世に染まっているな。姿を見せぬから挨拶代わりにノックをしただけではないか」


青碧の精霊と純白の白狼。その二人が湖の中で対峙する。

互いに未だ手出しこそしていないけれど、しかしそこにある圧力は既に常人ならば立っていられないほどの濃度となって立ち込める。

それは、湖の外に居るルナフィリアの背後に侍る四人にまで届くほどにである。


「煩わしい人間どもがようやっと姿を見せぬようになったかと思ったおったのに、次は人形にもなれぬ獣風情のその傲慢さ――八つ裂きにしてくれようかしら…………と言いたいところだけれど……。ねぇ獣娘。その前に問うてあげる。貴方……何者かしら?」


隠しそうもないほどに怒りをその身に纏わせている水の精霊は、そのままルナフィリアに襲い掛かるかと思われたのだが――驚くべき事にその前に精霊はルナフィリアに対して問いを発してきたのだ。


ルナフィリア自身もそのまま衝突するかと思っていたが故に、その言葉にルナフィリアは――虚を突かれた。


そもそも、ルナフィリアは初めからある程度強引に話を持っていくつもりであった。

種が違う――どころの話ではなく、精霊と人ではまさに根底からして何もかもが違うのだから。

さらにこの精霊は数えきれぬほどの長い年月を生きてきたかこそ。

全うな手段では会話すらも出来ぬと考えていた。

一応は精霊について伝えられてきたことによれば、彼女たちとの意思疎通は可能であることは知ってはいたが、けれどその会話に辿り着くために必要な儀式が必要であろうと考えた。

そして、それをこの湖に近づいた瞬間にルナフィリアは強く悟った。

精霊以外の全てを寄せ付けようとしないその湖に、水の中に体をつけただけでも姿を見せようとしないが故に。


けれども、湖全体をしてこちらを拒絶しようとするその姿から、この湖にこれ以上に手を出せば必ず衝突が起きることもなお確信に至る。

だがルナフィリア自身はグランらに述べたようにこの湖に手を出さずにあの国の発展はあり得ないと考える。


そもそもあの国で現在使っている井戸水の源泉すらも此処なのだから。

ならば既に手を出しているのだ。なればこそ遠くない将来において必ずこの精霊と衝突するということを彼女はこの湖に辿り着いた時点で確信に至ったのだ。


故に多少強引であろうとも、その精霊を引きずり出した。

古今東西において例え世界が変わろうとも長い年月を生き、短命な人を下に見ているだろう者たちに認められる方法など一つであろう。

自らの力を見せつける。その力が己の領域にまで並び立つということを見せつけることである。

故に銀水晶を身に纏い、精霊を挑発し、その威を示そうとしたところであったのだが――。

まさかこれほど他を拒絶するような湖の主である精霊が、その前に精霊の方から問いを発せられるとはルナフィリアは思わなかったのだ。


だからこそ、虚をつかれ驚いた表情を見せたのだが――それはそれで面白いと思ったからこそ、ルナフィリアは笑みを浮かべて精霊の問いに答える。


「我はエルフィール王国における王である」

「……エルフィール王国? そのような国は妾は知らぬ。少なくとも百年前まではなかったはずよ」


精霊は自らの記憶を確かめるかのように僅かに眉を顰める。

そして、そのような精霊に対して楽しそうにルナな答える。


「応とも。建国歴半月といった新興国であるからな。此処より北方に歩いた場所に王都となるべき街がある。まあ今は街というよりも村に過ぎぬがな」


そうしてルナフィリアはフハハと普段と変わらぬ笑い声をあげる。

そのルナフィリアの言葉を聞いた精霊は――あぁ……とルナフィリアとその背後に控える四人の獣人を見て合点がいったように頷く。


「そういえば最近になって、獣どもがその辺りに集まりだしておったな。ならばなるほど。そこは獣どもが造った国というわけか」


そうして話ながら頷いた後に――精霊はそれまで見せていた不快な表情を変え愉快なモノを見つけたかのように妖艶に笑いだす。

そんな精霊の突然の変化にグラン達はついていくことが出来なかったが、精霊と正面から対峙するルナのみは精霊に反応があったのが嬉しいとでも言いたげに紅い瞳を輝かせながら問いかける。


おれの国が一体何がおかしいのだ。精霊よ」


そう問われた精霊は、口元の歪めた笑みを隠すことなく答える。


「ふふふ――。人形に過ぎぬ獣どもが今更になって国を造るなど。これが可笑しいと言わず何と言うのかしら?」

「……ふむ。人形。人形――か。そなたは先ほどから幾度もその言葉を使っているが、獣人が人形とはどういう意味で使っている?」

「ふふ――。そのまんまの意味よ。どうやら貴方達は獣人と呼ばれる種がどのようにして生み出されたのか忘れているようだけれど、貴方達が生まれた本来の意味からすればまさに人形というわけなのよ」


その言葉はルナフィリアを――ルフィリアナの背後に居る四人を――獣人族全てを見下すような言葉。

事実として精霊は確かにルナフィリア達を見下すように妖艶な笑みを浮かべたままであるのだが。

しかしルナフィリアはその好奇心の琴線に触れたかのように、瞳を輝かせかている。


「ほお。我らをまさに人形と言うか。しかもそなたは我らの生まれまで知っていると。それは――面白い。

ならばその辺りについて詳しく教えて貰えぬか?」

「――ふふ。それも暇つぶしには良いだろうけれど、その前にあなた自身について教えなさい。貴方が獣たちの王であるのは分かったけれど、それ以外のことについてよ。貴方の名は? 貴方という存在は何処から来たのかしら?」


その精霊の問いにルナフィリアは胸を張って答える。


「我の名はルナフィリア・シルエスト。何処からというならば――この摂理から外れた場所から。遠い世界よりこの世界に自らの手で飛び越えて来たのよ」


 その言葉を聞いて――精霊は自身が望んだ答えが帰ってきたことを喜ぶかのように笑う。

それは今までの獣人を見下すような妖艶とした笑みでは無く――純粋におかしくて仕方がないとでも言いたげな声を出して笑うのであった。


「あははははははは――。シルエスト。そう貴方はあのルナフィリア・シルエストの末裔だと言うのね。ならばあの転位から舞い戻ったと。高次元の壁すらも超えたはずなのにこの世界に戻れるだけの力を持つというの。あははあはははははは。面白い。本当に面白いわ。まさか今更になってその名を聞くことになるなんて思わなかったもの」

「――ほお。其方は本当によく知っているな。まさか精霊が我すら知らぬ出生を知っているなど思いもしなかったわ」

「あら? 貴方は貴方がどのような存在すらも知らないのね?」

「うむ知らぬ。我がどのような生まれなどもはや記録すら残っておらぬからな。故に――その辺りも含めて色々と教えてくれぬか?」

「……うーん。そうね。貴方自身は色々と興味が沸いてきたから話ぐらいはして上げても良いけど。――その前に貴方が本当にシルエストかどうか試させて貰うわ。それに合格出来たなら、先ほどの無礼も併せて許して上げるし、貴方が知りたい事も色々と教えてあげる」


 そう言いながら精霊の回りにいつの間にか湖から幾つも水流が纏わりだす。

そこから溢れ出る力に、ルナフィリアを見つめる瞳を見れば彼女が何をしたいかなど一目瞭然であった。


 故に――ルナフィリアもまたその身に多くの銀水晶の力を纏いながら堂々と精霊の正面に立ちながら彼女を見上げるのだった。


「――あぁ何時でも来るとよい。色々と手順は狂ったがやるべき事は変わらぬよ。精霊と呼ばれるその力、存分に振るってみせるとよい。その悉くを――凌駕してみせよう!」

「ふふ。口だけは達者のようね。ならば妾の力、存分に味わいなさい」


 こうして、互いに会話を重ねた後に白狼帝と精霊との闘いの火蓋が切って下されたのだった。


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