織姫と彦星の七夕は幸せです
こんにちは。今日は七夕ということで書いてみました!
カササギの黒い背中にま跨がる一人の若い男の姿がある。とても嬉しげな顔をしているが岸に近付くごとに表情は曇り、今にも溜め息がこぼれそうである。
現実逃避の為か、輝く数多の星によって生み出された天の川に目線を移し、何度見ても綺麗だなぁ。と先程とは打って変わって暗いやる気のでない声色で言った。
「着きましたよ、彦星様。織姫様との過ごす時間は一年に一度きり。楽しんでくださいね」
カササギは黒曜石のような瞳を優しげに目尻を下げ2人の幸せをあんじた。その優しさが思いがけず胸に温かく響き、暗いわだかまりも薄れていった。
「有り難う。送ってくれて」
と返事をするとカササギはまた優しい声で
「いえ、仕事なのでお気になさらず。では、そろそろ」
と言って紺色の先端だけが白い美しい翼をひろげ、帰って行った。その言葉は彦星に気を使わせない為に選んだ言葉であり、どこまでも優しい男であった。
早足で織姫の元へと歩く。たぶんまだ寝ているのだろう。前回も前々回もその前もまだ寝ていて迎えに来てくれなかった。
泣くぞ?泣いてやるぞ!?
やはり家に着くと織姫は気持ちよさそうに寝ている。家は美味しそうな香りで満たされていることから、おおかた準備で寝不足なのだろう。
枕はお腹のあたりに放り投げられ、柔らかく光沢のある絹を使った薄紅色の布は脚に絡まり、しまいには織り姫は布団に垂直に寝ている。
あまりにも寝相が悪いので、きっと西洋のベッドというもので寝たらきっと落ちて怪我をするのではないだろうか。ここが中国で良かったと心から思う。愛しい妻には怪我をしてほしくないから。
「起きろ。織姫、来たぞ」
揺らして起こす。すると、織姫は大きく開けた口を手で隠そうともしないで大胆にあくびをした。そして片目だけ開けて彦星の存在を認識する。すると顔を青くしてあわあわと焦り始めた。 目は潤み、鳴きそうな顔である。この顔に彦星は弱い。たちまち怒りという感情は消え失せた。あるのは“呆れ”と“深い愛情”。
「あああああっっ! ごめんなさいっ!! 貴方に会うのが楽しみで楽しみで興奮しちゃってなかなか眠れなくて……」
「遠足が楽しみで眠れないガキか。」
ふぅ。と溜め息を短く出す。完全に呆れた顔で、織姫は再度謝罪した。
「次はちゃんと来いよ。一秒でも長くお前といたいから。な?」
織姫の可愛らしい小さな赤い唇に口付けを落として、不敵に笑った。
その姿は妙な色気があって織姫はたちまち青い顔を赤くした。
「うん! 来年はしっかりと寝て起きるね!! あまりにも寝れなさそうなら睡眠薬をのむ。うん、それがいい」
「そこまでしなくしてもいいよ。」
「ううん。私は何でもしたい。だって、だって貴方のこと愛しているから」
お返しとばかりにキスをする。しかし、身長が少しばかり足りず、彦星の下唇にキスをするかたちになってしまったが。
こうして2人はこの1日をラブラブに暮らしましたとさ。
おしまい。
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織り姫の前日
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明日は彦星が帰ってくるから豪華なご飯にしよう! そのために今日は仕事を休み、準備をする。
興奮のあまり顔を赤くして満面の笑顔で忙しそうに準備をする。
一通り準備をやり終えたら、今度こそはちゃんと起きよう。そう思って早めに布団つく。
「明日はとうとう彦星に会えるっ!! 楽しみだな! 楽しみだな! もし、ちゃんとこれからも仕事をしていれば父様に2人でまた暮らすことを許してもらえるかなぁ」
許してもらえたら、のことを考える。毎日一緒にご飯を食べて、毎日お喋りをして……しっかりと仕事をこなせば許可してくれるかもしれない。その希望を胸に灯しながら眠りについた。
────いや、つこうとした。けれど興奮によって眠れない。
こうして気付けば3:00になっていて余計焦って眠れない。最後に記憶にあるのが時計の数字、3:48という文字。
────こうして今回も起きれなかった。
最後まで読んで下さって有り難う御座います!




