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パンドラの騎士  作者: 水乃晶
戦いの始まり
1/6

始まり

 村雨鉄哉むらさめてつやが高校二年にして悟った事。

 人生にはいい事なんて一つもない。

 あるのは悪い事か、それほど悪くない事だ。

 つまるところ俺は今悪い事の真っ只中にいる。

 朝から車に轢かれかけ、溝に足を突っ込み、猫にひっかかれ、鳥の糞に被弾し、頭から水を被った。 

「へへへ、もうどうにでもなれ……」

 しかもこの後は図書委員の仕事だ。

 正直誰も来やしない放課後の図書館に一時間は辛い。

「はぁ……」

 違うのだ。

 図書館は好きだし、本も好きなのだ。

 加えて言うなら今日は気に入ってるシリーズの新刊の発売日なのだ。

 くじ引きで放課後が当たったのが運の尽きだったのだ。 

「ぼやいてても始まらねぇー……ね」

 哀しいかな、その通りである。

 図書館前の掲示物に同調しながら、図書館の鍵を開け、札を開館にする。 

「来館者数はこの二週間0。今日はどうかな」 

 独り言で寂しさをまぎらわすも虚しさが増しただけであった。 

 それから四十五分ほど。 

 退屈過ぎて生徒手帳の生徒心得を真剣に読み始めた頃に、来館者があった。 

「ねぇ、訊きたいのだけれど」 

「はい?」 

 そこにいたのは、校内三大美人(新聞部調べ)の一人、浅黄美園あさぎみそのであった。

 全体的に清楚で落ち着いた雰囲気で、同じ学年ながら大人びて見える。

 全体のシルエットもよく、これがスタイルがいいという事なのだろうか。

 ジト目で睨まれたい、罵られたい、と論評があったが、本人は人を嫌ったことがないとまで言われる性格の良さらしい。

 余談だが、その論評をした新聞部員はドMでなにが悪いという記事を連載している。 

 だからどうしたという話である。 

「神話……パンドラの箱に関する本はどこにあるかしら?」

「神話? えーっと、文化か文学……それと今月の一冊コーナーがパンドラって本だね」 

「そう。ありがとう」 

 今月の一冊コーナーとは、図書委員の独断と偏見で選ぶオススメしたい一冊である。

 基本的には小説が多いのだが、何故か今月はパンドラという謎の本である。

 何が謎って、流し読みしたはずなのに、中身を覚えてられないのだ。 

 十人以上いる図書委員がそんな様だし、さらにだ。

 誰が推薦したのか分からないのだ。 

 全員が違うと言い、事態が混乱になりかけたのを、委員長が沈めたのだが……正直今でも疑問に思っている。

「これ、借りられるかしら?」 

「うん、大丈夫だけど……」 

 読んでも覚えてられないと思うよ、といいかけたのを押しとどめる。

 変なやつのレッテルを貼られるのはごめんだ。

 一応、彼女が帰った後も一時間ぴったりまではいたが、その後は誰も来ず閉館になった。

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