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ヘリオドール侯爵家にて

何か話進まないので場所を侯爵家へと強制移動させました。

 カーネリアンは真横でガタガタと震え、血の気がひいた顔色の主を見上げた。


「お嬢様、大丈夫ですか」


「え、ええ。まったく大丈夫ではないわ」


「そのようで。しかし、せめて顔合わせが済むまでは倒れないでくださいね。私もそこまでフォローできませんし、そもそも支えられません」


「が、頑張るわ……」


「はい、お願いします」


 と、二人がこのような会話をしているのには、わけがある。


 ユークレースとカーネリアンはただ今ヘリオドール侯爵家の来賓室の、ふかふかふわふわの極上のソファーに腰をかけていた。


 本来侍女であるカーネリアンは座るべきではないが、案内された時に是非にと勧められたのと、ユークレースが今にも倒れそうだった為やもなく、である。


 目の前の値の張りそうなテーブルの上には、これまた高級そうなティーカップに、香りのよい紅茶が淹れられていた。


 しかしそれを楽しむ心のゆとりは今のユークレースにはない。


 先日フローライト子爵から初めて侯爵家との結婚の話を聞いた時には、それなりに時間の余裕はありそうに思えた。


 が、実際には早いなんてものではなかった。


 話があった翌々日には、すでに二人は侯爵家に連れてこられたのだから。


 再び立ちくらみを起こして倒れたユークレースに代わり、カーネリアンは「もっと詳細を」と粘った。


 が、フローライト子爵は、ユークレースには侯爵家側より説明をするので、取り敢えず早急に侯爵家まで行くように、としか言わなかった。

 

 聞けたのは、その侯爵家が古くからの名門貴族・ヘリオドール家だということだけだった。


 仕方なく、子爵に言われるままその翌日には馬車へ乗り込み、カーネリアンの他付き人もつけられずにヘリオドール侯爵家の前で馬車から下ろされた次第である。


 侯爵家の門戸を叩き、現れたおそらく執事と思われる老紳士に屋敷の中に通され、現在来賓室におさまって、待ち人を待っている、というわけである。


 待ち人とはもちろん、将来のユークレースの夫・ヘリオドール侯爵、のはずであるが……。


 コミュ障を発揮して震えるだけの主に反し、カーネリアンはいらいらしていた。


 事の展開が早すぎる。


 情報も少なすぎる。


 未婚の女性が単身で例え婚約者(前提)とは言えその屋敷に訪問するもの変だ。


 通常なら、親もしくは付添い人と同席の上顔合わせからになるはずなのに。


 まあ、ユークレースがまともに顔合わせできるはずもないだろうが。


 しかし。

 

 何かおかしい。


 というか、すべてが最初からおかしいのではないか。


 何か、自分は見落としてないか。


 もしくは、何か見過ごしていないだろうか。


 カーネリアンはその小さな頭で十歳児とは思えない考えをぐるぐる巡らせていると、コンコンッとノックの音が鳴った。


 ビクリと身体を大きく震わすユークレースに、カーネリアンは落ち着かせるように手を添えると扉の向こうの相手に声をかけた。


「どうぞ」


「失礼します」


 そう言って部屋に入ってきたのは、どう見てもユークレースと同じ年頃の少年だった。


 来るのは侯爵だろうと思っていたところ、実際には想像もしなかったような相手の姿に、カーネリアンが呆気にとられていると、その少年は二人を見てにっこりと笑った。


「初めてお目にかかります、ユークレース嬢とその小さな侍女さん。ヘリオドール侯爵家へようこそ」


 その少年の笑顔は一見とても爽やかそうに見えるのに、何故かその裏には何かを含んでいそうな胡散臭さをカーネリアンは感じ取ったのだった。


では次回またよろしくお願い致します。

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