表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

没落は突然に

妖精姫のキャラが……。

「お嬢様、最近何か変だとは思いませんか」


 寝る前の身支度として、カーネリアンはユークレースの髪をかしながらそう話しかけた。


「変? 特に感じないけれど……」


「まあ、お嬢様は立派な引きこもりでいらっしゃるから、気がつかないとは思いますけどね」


「もう、カーネリアンったらそんな本当のこと言わなくても~」


「何だか屋敷の中がどこかざわついてるような……、嫌な予感がしますね」


「あ~の~、カーネリアン? 私の話、聞いてる?」


「……それにしても、お嬢様のこの御髪は本当に綺麗ですね。キラキラつやつや輝かんばかりで」


「きゅ、急に話題変わったのね。……ふふ、でも、ありがとう。褒めてもらって、嬉しい……」


「何か困った時は高く売れそう……、幾らになるかな」


「一言余計だわ、カーネリアン……」


 そんな主従がいつもの会話をしていると、控えめなノックの音が聞こえた。


「こんな時間に……」


 カーネリアンは眉を顰めた。


 そして扉の方へ向かい、相手を確認する。


「ユークレース、カーネリアン? 私だよ。今少しいいかい?」


「旦那様……! 今しばらくお待ちを」


 カーネリアンはユークレースのナイトドレスの上にショールを巻きつけると、扉を開けフローライト子爵を部屋の中に招き入れた。


「お……お父……様……。こ、こん…な……はしたない姿で……し…失礼……い……い……」


 ユークレースがしどろもどろにそう言うのを、フローライト子爵は手を振って応えた。


「いや、私の方こそすまない、こんな時間に。気にしないでいいから、とりあえず座りなさい」


「は……い……」


 父に促され、ユークレースはソファーに腰を下ろした。


 どこかその顔色は青白い。


 ユークレースのコミュ障は、実の父親にも発揮されていたのだ。


 ユークレースの向かいに腰を下ろすと、フローライト子爵は部屋の隅に立ったままのカーネリアンの方を見て言った。


「カーネリアン、君も座って」


「いえ、私はこのままで」


「いいから座りなさい。でないと、私とユークレースではまともに話にもならないのは、わかっているだろう?」


「はい、それでは」


 どこか切なげな様子の子爵に、カーネリアンは頷くとユークレースの横に腰を下ろした。


 それにより、ユークレースがどこかほっとしたように息を吐くのをカーネリアンは肌で感じた。


「お父様、ではお話とはなんでしょう、とお嬢様が仰ってます」


 口が利けないわけでもない真横に座っている主の言葉を、そのまま代弁するかのようにカーネリアンが口にする。


 傍で見ていると滑稽でしかないような光景は、フローライト家にとっては当たり前のこととなっていた。


「うん、実はね……。非常に言いにくいことなんだが……」


 子爵は手を何度も組みかえ、やっと決心したように顔を上げて言った。


「実は、フローライト子爵家は、没落したんだ」

次回は、子爵との会話の続きです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ