妖精姫と侍女
カーネリアンがつぼです。
ある、妖精姫の一日――――。
「お嬢様、何を作ってらっしゃるんですか」
ティーセットをワゴンで運んできた妖精姫の侍女こと、カーネリアンは鼻歌交じりで何やらチクチクしている主にむかってそう声をかけた。
「うんー? カーネリアンの、新しいお洋服を、ちょっと」
「げ、またですか」
カーネリアンは侍女としてちょっとどうか、の声をあげた。
「ほら見て、これ。可愛いでしょう」
そんなカーネリアンの様子を目もくれもせず、ユークレースは製作中のソレを掲げて見せた。
そこにあるのは、レース、またレース。ふんだんにレース、のゴスロリドレスであった。
「……お嬢様、何度も申し上げるようですが、私は侍女なんです」
「……そうね、本当にごめんなさい。私が不甲斐ないばかりにまだこんな小さな貴女を侍女として働かせているなんて……」
しゅん、とする主にカーネリアンはぱたぱたと手を振った。
「いやいや、私が働いているのは私が働かなきゃ食っていけない環境の人間だからで、どちらかというとお嬢様の専属侍女だなんて普通に考えてその辺の下働きやってるよりもよっぽど」
「でもごめんなさい、私、貴女がいないと生きていけないの!」
「おい、聞けよ」
カーネリアンの怒りの沸点は低かった。
ユークレースが言った通り、カーネリアンはまだ幼い。
十歳になったばかりである。
その主であるユークレースは十五歳。
普通ならカーネリアンは子爵令嬢の専属侍女、などとてもなれる年齢でも身分でもない。
が、極度の人見知りでコミュ障のユークレースが唯一まともに話せるのがカーネリアンだけということもあり、今の現状がある。
ユークレースは相手にもよるが、大抵の場合他人に近寄り会話を交わすと、まずは震え、吐き気、眩暈の諸症状を起こす。
一定の距離を保っても、青褪めて俯いているのがやっとの状態なのだ。
ユークレースの、カーネリアンがいないと生きていけない発言は、大袈裟ではあるが、大袈裟過ぎるわけではない。
だからユークレースは、唯一普通に接することができるカーネリアンのことが大好きなのだ。
その、方向性は些かおかしなことになっているが。
「ふふー、可愛い~。きっとこのドレスとカチューシャは、赤みがかった茶色の髪と瞳のカーネリアンによく似合うはずね」
「だから、わたしは侍女なんですよ。いつどこでそんなのを着ろと」
「普段から着ればいいわ」
「それを着て仕事をしろと」
「可愛いカーネリアンが可愛い姿でそばにいてくれるなんて、私幸せ」
「はあ、もういいです」
そして、いつも結局は主の願いにカーネリアンが折れることになる。
これが、子爵令嬢ユークレースとその侍女カーネリアンの平和な日常であった。
が、その日常は脆くも崩れ去ることを、今の二人はまだ知らない――――。
それに対して妖精姫のキャラ付がまだ出来てない……。