7BET:海+季節外れ=青<白?
「海行こうぜーーー♪」
「海行こうぜぇ♪」
いきなりふざけんな。
前回逃げ出したバカ猫と大爆発を起こしたバカネズミです。
つーかそろそろ10月だし。
「今海に入ったら確実に唇青くなるぞ?」
さらに高熱にうなされることになるな。いや…死ぬか?
「「上等じゃぁぁぁ!!」」
死ぬ気満々ってか。猫とネズミなら水を嫌えよ。
「この二人は言い出すと聞かないわよ。」
クロウさん,諦め気味に言わないでください。
ん?
おぉ!!今のところのキャスト全員集合だ。
「ね〜行こうよ〜。」
ギューーー。
うぐぐ…く,首を絞めるなコイン…。
甘えるのか殺そうとするのかどっちかにしろ…どっちも嫌だけども!!
「奏君〜。海ぃ〜〜〜。」
ぴょこぴょこはね回りながら『海』を連呼するマウス。可愛いな,おい。
「行かないと言うならば…マウス!!例のやつを出せ。」
「硫酸?」
「しゃぁぁぁ!!行くぞコノヤロォォォ!!」
「「やったぜ〜♪」」
危うく死ぬところだった………。
「やれやれ…」
肩をすくめているクロウさんもどこか楽しそうだな。
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ここは家から徒歩10分のところにある海水浴場。白い砂浜,打ち寄せる波,海水浴を楽しむ大勢の人が………いるわけもなく,ただただ静かな波の音だけが響き渡っている。
む,虚しい…。
「人いないね〜?」
そりゃそうだって。最近夜から明け方にかけて肌寒いことに気付いてないのかな,マウス。今から泳ごうものなら本当に死ぬぞ?
「「ってことは………」」
顔を見合わせるコインとマウス。
「「貸し切りじゃぁぁぁぁぁ!!!」」
泳ぐ気だーーー!!
もう勝手にしてくれ。
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俺とクロウさんは波打ち際から少し離れた場所に腰を下ろして9月下旬に海水浴という暴挙に出た命知らずな二人を眺めている。その命知らず達は元気にはしゃいでる。
ある意味スゲェ…けどアホだ。
「確かに暖けぇけど…大丈夫かよ?」
「死にはしないんじゃないかしら?体だけはかなり丈夫よ。」 そりゃそうだな。
殺しても決して死にそうにはないやつらだ。
「クロウさんはあんなのと同じ職場で大変じゃないんですか?」
唐突な質問に『う〜ん…』と顎に手を当てて首を傾げる。俺だったら確実に胃潰瘍になるね。
「かなり大変だけど,毎日退屈はしないわね。ストレスも発散してるし,悩んでる暇もないって感じよ。だから楽に仕事はできてるわ。」
う〜む………。
確かにストレスは発散できてるよな(見る限り主にコインで)。楽しいっちゃ………楽しいか?
………わかるようでわからんな。
「凪君はコインといると楽しそうね?」
「はいっ!!?」
それはないだろ!!毎日飯食って,騒いで,飯食って,トラブル持ち込んで,飯食って,飯食って,飯食うようなのと一緒なんて。
……思い返すと飯食ってばっかだ。
………。
でも俺も退屈はしてないな,うん。
「…まぁ一人暮らしに舞い込んで来た台風みたいですね。」
「ふふふ,その気持ちはわかるわ。毎日が大荒れだものね?」
「ははは,うまいですね。」
二人で顔を見合わせ笑い合った。
確かに大荒れだけど…ほんの少し楽しいかもな。
そんな他愛もない話をしていたのだが,ふとあることに気が付いた。
「そういえば,なんか静かじゃないですか?」
「えっ?………確かに静かね。」
さっきまでの笑い声や水しぶきの音が全く聞こえなくなっている。
もしや………。
見合わせていた顔をゆっくりと海辺に移す。
そこには………
波打ち際に倒れ込み………
ガタガタと体を震わす二人が………
って,ぅおい!!!
「おい!!大丈夫か,おまえら!!?」
大慌てで駆け寄った俺の目には青を通り越し真っ白くなった二人の顔が写っていた。
分かりきったことだったろぅが……。
「「う…うう…海って………ささ…寒い」」
この時期だからだっつの。
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その後は二人を車に詰め込み,有りったけの衣類やらタオルやら膝掛けなどを被せ,暖房全開で温めた。
クロウさんは常識では考えられないスピードで我が家まで車を走らせていた。
スピードメーターが見たことないとこまで傾いているのを見たときは戦慄が走ったが,背に腹は変えられないので事故だけは起きないよう心から…それはもう心の奥底から祈り続けた。
家に到着しても二人は復活せず,それから夜中まで寝続けましたとさ。
…もう何が何だか。
「つ,次こそは……アワビを捕ってやる……。」
次は確実に死ぬぞ?