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プロローグ1 魔女は塔の上で嘲笑う

基本的に厨二全開の小説です。ご注意ください。

 烏が鳴いている。空へ昇る純白の塔の周りを黒い影が十重二十重と取り巻き、けたたましい叫びが蒼天を不穏に染めている。硝子のような空とはよく言うが、烏がそんな空を引っ掻いているようだ。

 女は烏に埋もれた塔を登っていた。ところどころが綻びたローブを擦り、息をつきながらも彼女は塔を貫く螺旋階段を上っていく。その眼はきつく、果てしなく長い階段の途上にあっても強い光を帯びていた。顔つきも険しく、細く秀麗な眉が寄せられている。


「もう少し……もう少しだ」


 烏の叫びが強まる。女の眼が階段の果てをとらえた。華奢な足が階段をするように駆けだす。疲れ果てた身体は歓喜に沸き立ち、今一度力を取り戻して、遥か視界の先へと彼女をいざなう。黒のローブがはためき、たちまちのうちに彼女は階段を上りきった。紅眼に光の象徴たる白き器と、それを守る幾何学の権化のような魔法陣が飛び込み、女の美しい横顔が弾ける歓喜を描く。

 烏が狂う。頑強な塔へ黒き翼をはためかせ、無謀な体当たりを敢行する。べしゃり、べしゃり。烏たちの血が塔を紅へと染め上げていく。血が、赤が、生命の紅が――純白の塔をおぞましきまだら模様に仕立てていく。


「邪魔な 死告鳥(カラス)どもめ。堕ちろ」


 虚空より黒曜の杖が来りて閃く。烏は石化し、遥か下界へと落ちた。番人の消えた塔の上で、女は神秘の護り手たる魔法陣に鎮座する白き器を手にし、高らかな嘲笑を浮かべる。


「聖ガーランドの愚者どもよ。我、神に代わって汝らに裁きを下さん! 今こそ千年に渡る罪科を償うべし! 幾千万の血を持ってしても贖えぬ罪の重みを知る時が来たのだ!」


 空が荒れる、裂ける! 暗雲が何処より現れ、天に雷鳴をとどろかせながら陽光を遮る。周囲に冷え切った闇が満ちた。その中で、女は白き器を天に掲げた。


「光よ!」


 焼けついた紅の稲妻が暗天を引き裂いた。稲光の先は鋭利な剣と化し、白き器を寸分たがわず穿った。金剛石より硬く頑強たる白き器の表面に罅が浮かび、それが七つに分かれ、奇天烈かつ複雑に過ぎる紋章を描き出す。


 傲慢

 嫉妬

 憤怒

 怠惰

 強欲

 暴食

 色欲


 ああ、なんということだろうか。今この時、純潔たる白の器に七つの罪が刻まれた――。

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