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猫とお話

作者: 夏樹 真

思いつきで書きました。そんな作品。

学校からの帰り道。


僕は何となく近くの公園に立ち寄った。


別に公園に用なんてなかった。

今日は、半日授業だったから午後まるまる時間が

空いていて、そんな日に家に帰ってゲームやネット

っていうのがもったいないと思っただけだ。


普段ろくに家から出ない僕がそんな事を感じるほど

今日の秋晴れの空は突き抜けるように冴えわたっていた。


公園は、広さが学校の教室ぐらいの大きさで

まぁ普通の普通の公園だ。


遊具もちっぽけな砂場と、ブランコがあるくらい。

滑り台も無ければ、シーソーも無い。

当然僕は、ブランコに腰掛ける。


一人きりでブランコに座っていると、

男子高校生が昼間から一人でちっぽけな公園にいる事が

なんだか滑稽な気がしてきた。

良い若いもんがなにやってんだろ。

とちょっと自分がおかしくなって、ふと横を見ると

隣のブランコに一匹の猫が座っている事に気が付いた。




*******************



「なぁ、こんな所で何してんだよ。お前も暇なのか?」


学制服姿の男子が隣のブランコに腰掛けた猫に話しかけている。普通の若い三毛猫だ。俊敏そうなほっそりとした

体をしている。雄の三毛猫はいないらしいから、雌なんだろう。


「なあ、そんなきちっとした座り方して。お前どっかの

飼い猫か?」


猫は、なぜだか置物のように背筋をぴんと立てて座っていた。しっぽの先までぴんとして、まるでお座りしている犬のような格好だ。猫でこの姿勢というのはあまり見ない。

まるで、ご主人様を出迎える召使いといった感じだ。

しかもバランス悪いブランコの上で。


「ふん。今はそういう気分なのだ。別にお主が気にする必要もなかろう。」


猫の方は、まるでなんでもないように言い捨てたが、

学生は飛び上がって驚いた。


「ね、猫が、しゃ、しゃべった。しゃべったよな今?!」


「むろん喋ったが。というより話しかけたのはお主だろう?」


「・・・・・・そりゃ、話しかけたけど。普通猫から返事があるとは思わないだろ。単なる独り言みたいなもだ。」


「ふむ、それならかまわないな。存分に独り言を言うがよい。我は返事をせんからそれで良かろう。」


唖然とした顔をしていた学生はあわてて。


「いや、まてまてまて!落ち着け!落ち着け!猫が喋るなんてそんなバカな。・・・・・。そうだよ、妄想だな。

幻聴だよ。俺疲れてるのかな。あ、もしかしたら夢か?コレ夢なんだな。そっかなんだー焦ったわー。ホントに日本語喋る猫がいるのかと思ったわ。そーか、そーか、そりゃそうだよね。こんな普通の公園に日本語を喋れる猫がいるわけもないよな。あーびっくりしたぜ。」


「前言撤回する。独り言もうるさいので、公園から出てもらえないだろうか?せめて、あの砂場で一人で遊んできてもらえないか?」


「公園で昼間っから一人で遊んでいる高校生とか、怪しすぎるだろ!どんな羞恥プレイだ!」


「・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・。」


「・・・マジか?」


「・・・マジかとは、何が?」


「マジでお前が喋っているのか?」


「さっきから散々会話しているではないか?

それともあれか?お前は人間のくせに、さっきの会話を

もう忘れるほどアホなのか?」


「ぐっ。ね、猫にバカにされてる!クソむかつく!」


「もうよい。集中が切れてしまった故、ちょっと会話につき合え坊主」


猫は、さっきまでのぴんとした姿勢を崩すと。

ブランコの上で腹ばいの姿勢になった。

さっきまでと違い良く見る日向ぼっこしている猫の図だ。


「で、小僧。こんな天気の良い昼間から。このような寂れた公園になんの用だったのだ?」


「別に用なんてないよ。学校が早く終わる日でね。

ちょっと、天気もいいしのんびりしながら。

進路とか、恋愛とか人生とか、どうでも良いことを

考えようと。まぁ、ともかく用事なんてなくてぼーっと

しようと思っていたって所かな。」


「ほう。つまり、お前には友達がいないと。」


「い、いや、友達いないとか言ってないだろ!話し聞けよ!確かに暇してるのは確かだけど!って言うか、

さっきから坊主とかお前とか偉そうだな。」


「ふ、ふーん。こんな天気が良くて、学校が午前で終わるというのに、予定が入っていない時点で、友達居ないの確定じゃ。せめて、遊ぶ予定があったけど、ドタキャンされた~という言い訳ができれば良かったのじゃがな。

この私の目はごまかせん。お前には友達が居ない!!」


「少ない。から居ない。になってんじゃねーか!居るよ!

少ないけど居るって!いちいちムカつく猫だな。

だいたいお前はどうなんだ。こんな公園に一人っていうのはお前も一緒じゃないか。」


「人間と猫を同じ扱いにしては、困るな。猫とは、元来

きままなものよ。群れるも群れないも、そいつの自由じゃ。人間のぼっちと、猫のぼっちを一緒にするでない!」


「ぼっちとか、なんか口調は堅苦しいのに、言葉が俗っぽ過ぎないか。」


「最新の流行は常に気をつけて居ないとな。情弱には、

なりたく無いものだ。猫の世界は以外と闘争があふれておってな。何丁目のどこが、誰の縄張りか、権力争いがはげしくてな。情報は私の武器だ。」


「お前は、何様なんだよ。それで・・・・・・・。

さっきから聞きたかったんだが、聞いていいか?」


「なんじゃ?”ぼっち”よ。」


「だから、ぼっちじゃねーって。

なあ、何で日本語喋れるの?」


「なぜ、と聞かれれば。たまたま、としか答えようがないの。前世が人間だったとか、脳をマッドサイエンティストに改造された実験猫でもない。はたまた、猫と見せかけて宇宙人でも無い。秘密道具を持った未来猫でもない。そんな、大冒険とは縁もゆかりもない。単なる猫よ。」


「日本語喋ってる時点で、たいした事あるようにしか思えないけどな。しかも、質問に答えてないし。」


「しいて、言うなら生まれついてという事じゃな。

幼少の頃から、人間の幼児と共に育てられてな。

まぁ、才能もあったのじゃろう。うまいこと喋れるように

なってしまった。わけじゃ。」


「ふーん。なんだか信じられない話しだな。

猫の脳って人間の6歳くらいの知能しか無いんじゃ無かったか?でも、俺と同じ位の受け答えしてるし、まだ宇宙人って方がしっくりくるけど。」


「まぁ、嘘だからな。」


「嘘かよ!!」


「ふむ、このぐらいの嘘で騙せると思った私のミスだな。

いやーすまない。お主を侮っておった。存外バカでは無いのだな。」


「なんだろう。ものすごくバカにされている気がする。」


「バカにしておるからなぁ。」


「なんで、バカにされてんだよ俺。はぁーあ。

んで、本当は?」


「わからん。冗談では無く、わからん。私にとってはむしろ、なぜ他の猫が喋らんのかがわからん。そもそも、

なぜ人間は、人間しか喋らないと考えているのだ。」


「いやだって、人間以外の生物が日本語喋っているの見たことないし。」


「ふん。なら、今日から認識を改めるのだな。世の中には、喋る猫も居るということを。」


「いやまぁ。目の前で見てるからさすがに信じるけどさぁ。決して一般的じゃないってのはわかるだろ?常識的に考えて。」


「まったく、常識常識と。そんなんだから。君らはゆとりと呼ばれるんだよ。いいかね。常識など時代によって変わるものであり、そう単純でもないんだよ。かつて、不可能の例えとして黒い白鳥をさがすようなものだと、言われた時代があったが、実際に黒の白鳥・・・こう言うと矛盾するようだが・・・・が見つかってしまったため、常識は書き換えられた。覚えておくといい。常識とは覆されるものだと。」


「・・・・・・・・。だからお前は、何様なんだよ?」


「我が輩は猫である。」


「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・。」


「・・・・名前はまだない。」


「続けるのかよ!?」


「・・・・・・・。むしゃくしゃしてやった。

今は反省している。」


「犯罪者!?」


「まぁ、冗談はともかく。本当にただの猫だ。日本語が喋れて、ちょっとお茶目なな。」


「おちゃめさはいらねぇな。」


「今なら、布団カバーもつきます。」


「いらねぇって。」


「どうだ、私を飼わないか。ぼっちのお主にはちょうどいい相手だと思うが。」


「だからぼっちじゃ・・・。はぁ、なんか言い合ってもかてねぇな。まぁ、こんなペットが居ても面白いか。

おとなしくしてろよ。あと、頭いいんならトイレとかしっかりしろよ。そんなら飼ってやる。」


「当然だ。むしろ、お前のトイレの面倒ぐらいなら見てやろう。」


「もういい。突っ込む気も失せた。さあ、帰ろうぜ。

(見せもんにできそうだなコレ)」


「なんだ、不穏な空気を感じたが」


「なんでもねーよ。さて、行こうぜ。」


「ふむ。よろしく頼む。」


********************


学制服の男がブランコから立ち上がり、

一人で公園から出ていった。


仕方がない。猫が喋るなんて、本当は、そんな事あるはず無いのだから。


ふむ。やはり、妄想ってものは、寂しいものだ。


私は一人あくびを浮かべる。


因みに私は可愛らしい、三毛猫ではなく。くすんだ灰色一色だ。あこがれていたのだがな、本当に。若くもなく、

やせてもいない。ただの、おっさん猫である。

今日も、ブランコで一日だらーっとしていたのだ。

なに?姿がぜんぜん違うとな?ふっおっさんにもね。

見栄はあるんだよ・・・・。すまんね。


ふむ。やはり、こんな私を飼ってくれる変わった主は居ないようだ。


彼の去っていった方を見る。

まぁ、私を見ても何の反応もしない。無口な奴だったが

悪い奴ではなさそうだったし。飼ってくれたらよかった

んだがな。


おや、さっきの男が戻って来た。

手にはコンビニの袋がある。

これはもしや。



「ほら、お前も食うか。寂しいからつき合えよ。」


私は、男の手から唐揚げをありがたく頂戴する事にした。

ほら、やはりこいつはいいやつだ!




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