第9話 本当の気持ち
「よし、だいたいまとまったな。
みんなもう言いたいことはないか?」
孝太が口を開いた。
「一ついいですか。」
「いいぞ、孝太。何でもぶっちゃけろ。
勝利へのプロジェクトは、みんなが納得するまで話し合うのが鉄則だ。」
「正直言うと、今のひよこで、技術、体力で大鷹に太刀打ち出来るのは翔太くんだけです。
大鷹に勝つためには、時にはその翔太くんにポジションを変えて貰うことが必要です。
ディフェンスに専念してもらうかも。」
「そうだな。大鷹の攻撃力はピカイチだ。
今のひよこで太刀打ち出来るのは翔太ぐらいだろう。
どうだ翔太やれるか。」
「俺、ディフェンスとかやったことないけど。」
「翔太くん、ディフェンス出来るよ。
今でもやってるし。
パスコース読んでカットしたり、ドリブルする相手から動きを見てボールぶん取ったりしてる。」
「裕太はどう思う。」
「僕もそれ絶対必要だと思う。
だけど、ひよこで大鷹相手に点を取れるのも翔太くんだけ。時間帯によって、後から前までやって貰わないと。
守ってるだけじゃ勝てないし。」
「俺、みんな前しかやらないって思ってるけど。
本当はいろんなポジションやってみたい。
ただ、後だと誰かにパスしないといけないけど、俺パス下手っていうか全然出来ないし、、。」
「つまり、本当は翔太はどのポジションでもいいんだけど、パスが出来ないから後はやりたくないってことだな。」
「俺、本当はパスして失敗するのが怖いんだ。
でも、どうしたらいいか分からない。」
「私サッカーよく分からないけど、これって翔太くんがパス出来るようになるチャンスじゃない。
まだ一ヶ月あるし、それもプロジェクトに入れようよ。
みんなで、翔太くんがパス出来るようになる後押しをするの。」
「いいね。パスの成功にはもらう側の問題も大きいし、翔太だけじゃなくチームのみんながパスのレベルアップしないといけないな。」
「翔太くんは、パスするのもあるけど、もらうことも覚えないと。」
「そうだね。パスを受けることで、どんなパスが受けやすいか、次に繋げやすいかわかるしね。
翔太くん、一緒にサッカーゲームやってみようよ。
パスの組み立て方とかわかるよ。」
「じゃあ、それも加えるね。
翔太くん、いい。
えーと、、、、、はい出来たわ。
みんな、いいかしら。
じゃあ、みんながサインしたらプロジェクト開始よ。」
四人は満足した様子で頷いた。
「タイトルは、ひよこサッカークラブ勝利プロジェクトについてのみんなの約束。
長いかな、まあいいでしょ。」
そして、一人ずつサインしたのだった。
翔太、孝太、裕太、豪太、そして、
のり太こと法子。
「ところで、みんなこの機会にくん付けやめないか。翔太、孝太、裕太、同じ、た、同士呼び捨てでいいんじゃないか。俺が言うことでもないけどな。」
「みんなが良ければ。」
「僕も。」
「僕も大丈夫です。」
「なんか素敵ですね、いいなあ。
ふふ、私も男の子に生まれたら良かったのに。
そしたらのり太だし、、。
おい、のり太、、、きゃあ、、かわいい。」
「なんか広田先生が、異世界に行ってしまったので、ここいらで終了するか。
みんなありがとう。
気を付けて帰れよ。」
「しかし、驚いたな。
みんな、俺が言いにくいことズバズバ言ってたな。」
「みんなの話聞けて良かった。
自分の気持ちを隠さず伝え、議論して合意する。
決まりだから従えじゃなくて、自分も納得しているからがんばってやる、そうしたいって思うんです。
翔太くん、本当はパスして失敗するのが怖いって言ってくれた。
じゃあ、どうやったらうまくいくかみんなで考えよう。
これって凄いことですよ。」
「そうですね。
みんな本当の気持ちを話してくれた。
それが何より嬉しいです。
あっそうそう、今日千葉先生と駅前で軽く一杯行くんですが、広田先生一緒にいかがですか。
さすがに急ですかね。」
「ひ、ひ、ひまです。
軽く、いっぱい!飲むんだすか。
ぜひ、い、が、せ、て、くだされ。」
「広田先生、その、いっぱい!じゃないですよ。
本当、広田先生面白いなあ。」
この時、北原はまだ知らなかった。
法子は酒が入ると、本当に異世界に行ってしまうことを。




