第5話 法子の秘密のルーティン
法子は静かにDVDをセットした。
そして秘密の扉を開けて何かを取り出したのだ。
法子の汗と涙が染み込んだその物体は、もはや聖なる槍と宝玉を思わせる程黒光りし、鈍い光を放っていた。
「ふふふふふ。」
法子はふてぶてしい笑みを浮かべリモコンを押した。
そして、あのイントロが聞こえてきたのだ。
「きた、きた、きた、きた、けして止まらないあの人がきたわ。カモン、あはんっ。」
〜乗ってくれ〜
「はぁ!はぁ!」
そう、法子はあの伝説的ロックスターのファンなのだ。
そして、法子はロックのリズムに乗りながら、その黒光りするケン玉で恐ろしい技を繰り出したのだ。
法子のケン玉はロックでアクロバティック。
リズムに合わせて、ブリッジ、逆立ち、開脚、あらゆる体勢から様々な技を寸分の狂いなく繰り返す。
それも休みなく、瞬殺のスピードで。
そして曲の終わりに、ついにあの技を繰り出したのだ。
足の指にけん軸を挟むと、天井に向け足を真っすぐに向け、足で玉を巧みに放り投げた。
「どおりゃあ、、、!」
〜スポッ〜
そして玉は、寸分の狂いなくけん先に吸い込まれていった。
「はぁ!はぁ!
サンキューっ。
あふうっ。まずまずね。」
まだくそ暑いこの季節、冷房もかけず部屋を閉め切りにし恐ろしい技をかけ続けた法子は、汗だく、汁だく牛丼になっていた。
〜ピロピロピロリン〜
スマホが鳴った。
「あっ、嬉しいっ、まゆちゃんだ。」
「のりちゃん、ちょっと久しぶり。
駅でゆきちゃんがのりちゃん見たって聞いて電話したの。
のりちゃん、目が真っ赤で悲しそうだったって聞いて、気になったの。」
「あっ、ごめんごめん。まゆちゃん、ゆきちゃんにも心配させちゃって。
ちょっと悲しくなっちゃって、でももう大丈夫。
あの方のロックでケン玉やったから。」
「やっぱり、だと思ったよ。
のりちゃん、先生やらなくてもあれでご飯食べられるよ。
でも、気を付けてよ。前に肉離れして学校休んだじゃない。」
「恥ずかしいっ、必殺こむら返りね。
あれはもうやらないよぅ。
お母さんやお医者さんからもストップかかってるし、危険すぎるって。」
「だよね。あれはマジヤバいわ。
でも、また見てみたいかも、なんて嘘よっ。」
「ふふっ、見てみたいのまゆちゃん、いいわよ、。」
「やめてっ。私がのりちゃんのお母さんに怒られるよ。」
「で、何かあったの、のりちゃんを泣かすとはけしからん。男だったら私が許さんぞ!」
「うーん、ちょっとね。
まゆちゃんに聞いて貰おうかな。
男ならいいけど、、、、違うの。」
「ぜひぜひ、のりちゃんの話いっぱい聞きたいなあ。」
「うんとね、、、、。
まゆちゃん、ちょっと待ってて、着替えてくる。
汗でびしょびしょなの。」
「はーい。
ふふっ、のりちゃん、変わらないなあ。」




