第32話 俺はそう思わない
孝太と裕太はいつもの通り、ジャングルジムの上からひよこの紅白戦を見ている。
「今日は、翔太とかなちゃんのリベロ対決か。
さて、どうなるか見ものだな。」
「試しに提案してみたけど、即、みんな、よしそれやってみようって、変なチーム。」
「いいんじゃない、ひよこだし。」
「まあ、そうだね。ひよこらしいよ。」
2人のいるジャングルジム近くで、帽子とマスクの女の子がじっと試合を見ている。
「そこのきみ!
ここに上がると、ゲームがよく見えるよ。
良かったら、どうぞ。」
「はい、ありがとう、、ここで大丈夫です。」
「2人はそこで、何をしてるんですか。」
「僕たちは、ひよこの選手の能力、特性、状況判断力、対応力、最適なフォーメーション、オフザボールの動きとか、とにかくいろいろ観察してるんだ。
これからのひよこに生かすためにね。」
「小学生なのに?」
「小学生だって関係ないよ。
ひよこはそういうのOKなんだ。
他の強豪チームより、ひよこはまだまだ総合力が低いから、個々のポテンシャルをしっかりつかんで、長所を最大に生かさないとまず勝てない。」
「だから、分析が欠かせないんだよ。」
「そうなんですか。」
「そうそう、みんなそれぞれいい所があるから、それを見つけてひよこの戦力として生かすんだ。
オンラインゲームより面白いよ。」
「何か面白そうですね。」
「うん、面白いし、いろいろ楽しいよ。」
「僕は孝太。」
「僕は裕太、よろしくね。」
「私は、、ももこ。」
「いい名前だね、日本の若きボランチと同じ名前だ。」
「確かに、ほんといい名前。
彼女のシュートは半端ないよ。」
「そうなんですか?」
「間違いない、ドイツで輝く日本の未来だよ。
素敵な名前だね。」
ハーフタイムになった。
マスクの女の子は、お母さんらしき人と広田先生の所へ歩いて行った。
「ももこ、ってひょっとして。」
「あっ、一昨日話してた、ももちゃん?」
「悪い、全然、気がつかなかったよ。」
「まあ、大丈夫じゃない。
翔太の知り合いみたいだし。」
「そうだね、翔太にまかせよう。
翔太が、たぶんなんとかしてくれるよ。」
「うん、翔太なら大丈夫。」
「広田先生ですか?」
「はい。」
「ももこの母です。
昨日、藤田先生から先生のお手紙を頂いて、ももこも行ってみたいって。
それで、早速ですが今日練習を見にきました。」
「ええっっ、ほんと、来ていただけて嬉しいです。」
「ももちゃん、来てくれてありがとう。
私、とっても嬉しいよ。」
「北原先生っ!、ももちゃんとお母さん。
練習見に来てくれたんですよ。」
「うわっ、ありがとうございます。
むちゃくちゃ嬉しい、大歓迎です!
ようこそ、ももちゃん。」
「翔太、かな、ちぃ、ちょっと、」
「キャプテンのかなです。
ももちゃんよろしくね!
見に来てくれてありがとう!」
「ちかこです。ちぃちゃんて呼んでね。
ももちゃん、ゆっくり見ていって。
ひよこのサッカーは楽しいよ。」
「俺は知ってる、久しぶり。」
「翔太くん、サッカー見に来たよ。」
「おう、またサッカーしようぜ。
もも、ところで、風邪でもひいたか。
マスクなんかして。」
「ちょっと、翔太っ、、。」
「男の子が、お前、かわいくないって言うから、、、だから、私、外に出るときマスクしてる、、、。」
「かわいくないとか、そんなのサッカーに関係ないだろ。
それに、、俺は、全然、そう思わない。」
「翔太、お前って奴は、、まあいい。
よーし、後半はうちのチームが絶対勝つ!
ちぃちゃん、例のあれ、使うよ。」
「了解、かなちゃん!」
「マジっ、、カズキ、俺らもあれやるか。」
「いいね!ところであれって何?」
「みんな、後半は翔太とかなが変なことやるみたいだぞ。
こりゃ楽しみだな。
よし、いい機会だ。
試合では、敵が何をしてくるかわからん。
当然、臨機応変な対応が必要だ。
後半は、実戦だと思って、みんなが、かな、ちぃ、翔太、カズキの予想外な動きについて行くんだ。」
ピーー!
後半がスタートした。
「ももちゃん、ひよこ、変なチームでしょ。」
「いえ、みんな楽しそうで素敵です。
翔太くんも、昔と変わらないし。」
そして、ももちゃんはマスクを外しつぶやいた。
「先生、明日の練習は何時からですか?」
「3時からよ。
ももちゃん、ようこそひよこへ。」
何かに気づいた翔太が、小さく手を振っている。
ももちゃんも、かわいい笑顔で手を振って応えたのだった。




