第3話 ノールックシュート炸裂?
「ああ、遅刻だあ、やばし。」
法子は放課後、グラウンドにひょこひょこ走りで向かっていた。
これはあの巨匠の走りに似ているが、内股で女性らしさを演出できる優れものだ。
手の指先をまっすぐに、指が反り返る程伸ばすことで、足の内股に効率良く力を伝えることが出来るのだ。
歩幅は驚く程小さい。
ちなみにスピードは著しく遅く、スポーツ全般には全く適さないのが唯一のウィークポイントである。
グラウンドでは、北原先生がコーチを務めるひよこサッカークラブの練習が行われているのだ。
〜あっ、北原先生発見!
白いぴったりポロシャツにジャージ。
おっとヨダレが、って違うの、これは汗だって。
あと50メートル。
もう30メートル
頑張れ、あと少し。ひょこひょこ、ひょこひょこ、、っと。〜
その時、翔太くんが強烈なシュートを放った。
キーパーがかろうじてパンチング。
そのボールは、一切勢いを落とすことなく、シュート回転しながら走る法子に向かってきたのだ。
「広田先生、危ない!
ボール、ボール、気をつけて先生!」
〜あっ、北原先生が手を振ってる。
何か言ってる?
ボールって何よ??
でも私、今はあ、な、た、しか見えないのよん〜
「北原先生、お待た、、、せ」
〜ボン〜
法子は、向かってきたボールに強烈なヘディングをかましたのだ。
「ああんっ、っ、、、」
そして、ボールがゴールの隅に吸い込まれるのを見ることなく、法子は崩れ落ちていった。
〜なぜ私、北原先生の腕の中にいるの?
ここはどこ、私はだれ。
うふっ、遠くから北原先生の声が聞こえる。
広田先生、広田先生って、私はここよ〜
「広田先生、広田先生、大丈夫ですか。」
「はっ」
法子は、突然何も無かったようにむくっと立ち上がった。
「オホホホ、北原先生、大丈夫ざますよ。」
「全然大丈夫じゃないですよ。
目すわってキャラ変わっるし。」
「あれっ、すんません、大丈夫でがんす。
広い田んぼと書いて広田でごあす。」
「あっ、良かった、いつもの広田先生に戻った。」
子供たちが、ガヤガヤ集まってきた。
「広田先生大丈夫?」
「でも、広田先生の渾身のヘディングシュートすごかったよな。」
「ゴール全然見ないで、ポストの隅に叩き込むって神業だって。ノールックシュートじゃね。」
「俺、広田先生ただ者じゃないって思ってたんだよな。あの走り方がいいのかなあ。」
「ああ、確かにあのシュートは凄かったな。
20年以上サッカーやってるけど、俺もあんなの見たことない。
広田先生、さっきは凄いシュートでしたね。
先生、もしかして、サッカー、それか何か球技をやられてたんですか。」
「ケン玉を少々、、、」
、、、不思議な静けさの後笛が鳴った。
ピー!
「よし、みんな試合再開するぞ!」
その時にはグラウンドの誰も、法子のケン玉の恐ろしい実力を知る由も無かったのだった。




