第21話 10番の涙
「今どれくらい経ってる?」
「10分です。」
「そろそろ手を打たないとマズイな。
よし、フォワードをツインタワーに変えるか。
ちょうど、右サイドバックも小さいしな。」
「それって、うちのサッカーらしくないんじゃ。」
「格好つけても、負けたら終わりだ。
何があっても勝つのが、うちのサッカーだ。
大鷹の歴史に、ひよこに負けたなんて傷をつけるわけにはいかない。
170cm超えFWを2人とも入れるぞ。
シンプルにサイドに付ける。
サイドアタックから、センタリングを叩き込んで終了だ。
残念だったな、ひよこ!」
そしてすぐ、ウォーミングアップをしていた長身FW2人が投入された。
大鷹は、翔太がマンマークする10番をあえて使わず、左右の11番と7番にダイレクトにパスを振り分けてくる。
それを見たかなは、すかさず翔太と一言二言話すと、ちぃちゃんとFWのカズキをチェンジした。
カズキはチームでいちばんデカいし、ディフェンスもそれなりに上手い。
サイド攻撃とセンタリングに振り切った大鷹の猛攻は、全く別のチームのようだ。
息が上がり始めたひよこのプレスを巧みにかわし、次々と放り込まれるアーリークロスや鋭いセンタリングにひよこは防戦一方だ。
たまらず、翔太も10番のマークからディフェンスラインに入って、ひたすらボールを跳ね返している。
ひよこも急ぎ中盤の2人を入れ替えるが、大鷹の勢いは抑えられない。
「耐えてくれ、みんな!後5分。」
猛攻に耐え続けるひよこ達に、応援団の大声援が響く。
〜ひよこ!ひよこ!ひよこ!ひよこっ!〜
しかし、大鷹の同点弾は以外な所から生まれた。
翔太のマンマークで封じられていた大鷹の10番だ。
自由を得た10番が、こぼれ球を拾うと怒りを込めたように、高速の無回転シュートをひよこゴールに叩き込んだのだ。
呆然とするキーパーのじん、そしてひよこの選手を尻目に、大鷹の10番は無言で自陣に歩き出した。
ゴールを祝いに、取り囲む選手達に向かってキャプテンの10番は振り絞るように言った。
「まだ、終わってないぞ、ひよこを甘く見るな!」
彼の目に、うっすらと涙が滲んでいることに気づく者は誰もいなかった。




