第20話 サッカーボール
「後半はバスケット方式を活かして、バンバンメンバーチェンジしていくぞ。
まず4人フレッシュなメンバーに入れ替え、大鷹の早いパス回しに対抗する。
10番を自由にさせないよう翔太がマンマークするが、他の選手もみんな上手くて早い。
なかなか、こんな相手と戦える機会はない。
どこまで喰らいつけるか、自分に挑戦するんだ。
前半のメンバーも、後でまた出てもらうぞ。
全員がウォーミングアップを欠かすな。
大鷹に、ひよこの全員サッカーを見せてやるんだ。」
「ちぃ、かなの隣で大鷹のリズムに慣れておけ。」
「かなちゃん、、、よろしくね。」
「ちぃちゃんの凄さは私が一番分かってる。
2人で力を合わせて戦えば最強だよ。」
「うん、、、頑張る。」
「翔太、何ぼーっとしてるの。」
「あっ、ごめん。ちょっとね。」
「ちぃちゃんも入ったし、気合い入れていくわよ。」
「問題ない、、気合いはもう十分入ってる。」
翔太は思い出していた。
サッカーを始めた頃のことを。
翔太がいいプレーをするたび、大喜びする母の笑顔を。
「久しぶりに、母ちゃん喜ばしてやるか。」
〜ピーー〜
キックオフの笛がなった。
早く同点にしたい大鷹は、後半開始から10番を起点に猛攻を仕掛ける。
しかし、キャプテン10番に対する翔太の気合い十分の執拗なマークで、なかなか本来の攻撃の形が作れない。
「翔太なんか楽しそうだな。
あんな嬉しそうにマンマークするやつ初めて見たぞ。
それに、前半よりさらにキレっキレじゃないか?」
「翔太、上手い奴が次に何をするか読んで、対応するのが楽しくて仕方がないんですよ。」
「それに翔太、お母さん来てるから気合い入ってるしね。」
「そうそう。」
「えっ、どこ?」
裕太が振り返ると、近くで法子とお母さんが見守っている。
「そういうことね。」
北原コーチは、翔太のお母さんにニコっと笑った。
10番と11番の必死のせめぎ合いは、どんどん加速していく。
マークを外そうとする10番と食らいつく翔太、くさびのボールをキープする10番と密着して自由にさせない翔太。
翔太がボールをぶん取ると、必死の形相で取り返しにくる10番。
「翔太くん楽しそう。」
「はい、サッカー始めた頃みたいです。
幼稚園の時の誕生日の朝、翔太の枕元に小さなサッカーボールを置いたんです。」
「あの、サッカーボール?」
「そうです。
いつも無口な翔太が、わーっ、母ちゃんありがとう、って泣きながら抱きついてきて。」
大鷹は動きが取れない10番をあきらめたのか、サイドアタックを開始する。
パスを受けたスピードのある7番が、左サイドを駆け上がりペナルティエリアに近づいてくる。
ちぃちゃんのサイドだ。
ちぃちゃんとかなが目を合わせた。
かなが体を寄せる。
大鷹の7番は、早い切り返しでうまくかわしたと思った、、が、、見えない所から突如もう1人が現れ、ボールをかっさらい大きくクリアした。
「あれ、今っ、誰かいたか、、。」
「作戦成功!」
かなとちぃちゃんは、笑顔でハイタッチした。
「あれから翔太、そのボールが友達になったんです。」
「翔太くん、いまは友達いっぱい増えましたよ。
全ては、お母さんのボールがはじまり、、です。」
「はい、、。」
「ナイスディフェンス!」
翔太の気合いの入った声が響いていた。




