第16話 ひよこの鉄の壁
「みんな落ち着け、こんなのたまたまだ。
大鷹のサッカーを忘れるな。
いつも通りしっかり確実に繋いでいくぞ。」
大鷹のキャプテンが声を上げる。
大鷹のキャプテンも10番で、この地域では名のあるテクニシャンだ。
大鷹のキックオフで再スタート。
後にボールを戻してから、早いパス回しで繋いでいくのが彼らのスタイルだ。
「大鷹のボール回し、えらく慎重だね。」
「うん、パスワークにスピード感が無いよ。」
「翔太の一発がかなり効いてるな。」
かなとひよこの選手がパスコースを切り、翔太側へのパスを誘導する。
翔太はちんたら歩いて、余裕で鼻をほじったりしている。
大鷹の10番が安心して翔太のいる右サイドにボールを展開した瞬間、突然、翔太が目の色を変えて猛烈なダッシュを開始する。
「パスが弱いや。」
「チャンスだ、翔太行けぇ!」
またたく間に翔太がボールをカット、一気に左サイドを高速で駆け上がる。
1人の大鷹の選手が体を寄せてくるが、翔太は見事なエラシコで抜き去りまっすぐにゴールへ迫る。
しかし、前にはまだ2人の選手が道を塞いでいる。
翔太は右のかなにいったんボールを預け、するするとペナルティエリアに侵入した。
翔太がやることは、かなの完璧な折り返しをただ軽く流し込むだけだった。
〜ゴール、2点目だ、、やったあぁ、、、!〜
ひよこの応援団はもはやお祭り状態だ。
かなちゃんのお父さんは、もはや涙で立ち尽くしていた。
大鷹のコーチが、なりふり構わず叫ぶ。
「10番と11番を自由にさせるな。
徹底マークしろ。」
アシスタントコーチが、言いにくそうに声をかける。
「コーチ、ちょっと、ちょっと。」
「どうした。今忙しいんだっ。」
「その10番と11番、なんか一番後にいますけど。」
「なにぃ、、。」
かなと翔太は素早くゴール前に戻り、キーパーのじんに声をかけた。
「じん、これからが大仕事よ。」
「ああ任せろ!まだ前半は15分はあるな。
3人で跳ね返しまくるぞ。」
「ひよこの鉄の壁ね。」
「やるしかないな!」
「おう!」
そして、3人は目を合わせて力強く拳を合わせたのだった。




