第14話 ベストを尽くせ
「しかし凄い応援団ですね。」
大鷹のアシストコーチが、驚いたようにコーチの本田に言った。
「ああ、前はこんなにいなかったと思うが。
まるで運動会みたいだ。」
ひよこサポーターの数は、優に100人を超えている。
ホームではあるが、応援では大鷹をはるかに圧倒していた。
「ひよこ!ひよこ!ひよこっ!!」
先頭で黄色い旗を振り絶叫しているのは、サッカー大好き、かなちゃんのお父さんだ。
、、、とはいえ、大鷹の強さは次元が違った。
低学年ながら、スキル、体力、戦術理解度、得点力、全てにおいて、大鷹はひよこを圧倒したのだ。
ハーフタイム終了時でスコアは0-5、早いパス回しに翻弄され、走り続けたひよこの子供達は肩で息をして戻ってきた。
コーチの北原は笑顔で声をかけた。
「いいぞ!いいぞ、みんないいプレーしてる。
よく走って、よく守っている。
まだまだ喰らいついていこう。
気持ちが負けてなければ、チャンスはある。
ひよこ魂を見せてやれ!」
ジャングルジムの上では、孝太と裕太が低学年の試合を見守っていた。
「やはり強いね、大鷹。」
「そうだね。すごく組織として完成されてる。
パス回しが早すぎて、ひよこは全くついていけてない。
こんな早いパス回し初めて見たんだろうな。
大鷹のボール支配率は80%位かな。」
「高学年のチームはもっと成熟しているだろうね。」
「だろうね。
後からのビルドアップと早いパス回しで、ゲームを支配してくる。」
「逆にその支配を崩せたら、、チャンスがある。」
「そうだね。大鷹のゲームプランを壊さないと、ひよこに勝ち目はない。」
「守りも固そうだね。」
「うん固いだろうね。でも、今の翔太なら必ず破れるさ。」
「それは心配してないよ。」
後半が始まった。
ひよこは後半スタートから、4人フレッシュな選手を入れている。
後半もひよこはひたすらボールを追いかけ続けた。
結果、ひよこの奮闘と大鷹がペースを落としたこともあって後半は2失点に抑えた。
力の差は明白だった。
「みんなよく頑張ったな。
気持ちは全く負けてなかったぞ。
ベストを尽くしたから、みんな100点満点だ。
俺むちゃくちゃ感動したよ。
凄くいい試合だった。
みんな、ありがとう!」
0-7で負けたが、ひよこの子供達はどこか満足そうな笑みを見せている。
何か大事な物を発見したかのように。
ひよこの大応援団は、大きな拍手で子供達の健闘を称えている。
「よーし、次の試合だ。
みんな集まれ。」
「昨日説明した作戦通りで行くぞ。
ベストを尽くせ!
ピッチ上での司令塔はかなだ。
みんな、迷ったら俺じゃなくキャプテンの10番、かなを見ろ。
かな、大鷹のゲームプランをぶち壊してやろうぜ。」
「孝太、裕太、俺の近くにいて、流れを見て意見があったらいつでも言ってくれ。」
「さあ、いよいよだ。
頑張って戦い抜いた低学年組に、先輩の凄さを見せてやれ。
だからサッカーは楽しいんだってな。」
ピッチに向かう11番の背中に北原が声をかけた。
「翔太!」
「いよいよプロジェクトの最終章だ。
翔太、お前を信じてる。」
「分かってる。約束しただろ。」
翔太、孝太、裕太、豪太、のり太は、静かに拳を合わせたのだった。




