第11話 当たり前のこと
「二人でさっそく何してるのかなぁ。」
法子は、ジャングルジムの上からサッカーの練習を見つめる2人に声を掛けた。
「戦力分析だよ。練習試合やるって聞いたから。」
「そうなんだ。で、どう。
面白い発見とかあった?裕太くん。」
「いろいろとね。
翔太がボール持つと、やっぱり突破力、得点力あるから敵が集まってくる。
結果として他の選手はフリーになるけど、それがほとんど活かされてないよ。」
「そーだね。キーパー入れて8人しかいないから、翔太に2人徹底マークするだけで、フリーな選手が出てくる。
まあ、フリーな選手もボールもらうの期待してない気がするけどね。」
「確かに、人いるのになんかもったいないわね。」
「そう、もったいないよ。」
「例えば、あの女の子、いつもフリーだよ。」
「そうだね。あの女の子は必ずいいポジションにいるね。
まあ、敵も甘く見て放っておいてくれてるしね。」
「でも、ほんと誰も気がつかないな。
敵だけじゃなく、味方も。」
「6年生のちぃちゃんね。
北原先生がステルスちぃちゃんて言ってた。」
「ステルスちぃちゃん、まさしく!
孝太、ステルスちぃちゃん、秘密兵器になるかな。」
「そうだね。使いどころ次第でね。」
「だね。」
「あっ、そう言えば、クラスの女の子達がびっくりしてたよ。3人からおはようって言われたって。」
「約束だしな。」
「そう、約束。」
「でも、先生嬉しかったなあ、ありがと。」
「そんなの当たり前だよ、約束したんだから。」
「何、先生言ってるの、当たり前のこと!」
「うん、当たり前だよね。」
「あとは、翔太にどうやってこれを理解させるかだな。」
「今週日曜日、僕んちでゲームやらない。」
「いいね。サッカーゲームで、フリーの選手の使い方、パスの必要性や仕組みから理解しないと。」
「それから、初めて実地練習だな。」
「うん。それがいい。」
「先生、北原先生に言っておいて。
あの女の子、ちぃちゃん、に走り込んでシュートする練習させておいてって。」
「あっ、それともう1人のディフェンスの女の子にもね。
あの子もキーになる。
翔太に当たり負けしないよ。凄いや。
どうしても点が欲しい時、フォワードに入ってもらうかも。
敵をブロックしてくれたら、ちぃちゃんのシュートチャンスができるよ。」
「それいいね。大鷹のディフェンス、多分びっくりするよ。
2人の女の子が前に入ってきて、おっと、ひよこついに試合捨てたかとか油断させて、あの子がしっかりブロック、突然死角から現れたちぃちゃんがシュートとかね。」
「いいね、それ。なんか面白くなってきた。」
「5年生のかなちゃんね。
うん、分かった。
北原先生に伝えとく。2人とも、ありがとう。
がんばってね!」
「ということを、2人から北原先生に伝えておいてって。」
「いやあ、あの2人。しっかり見てくれてますよ。」
「うまくいきますか?」
「翔太次第ではありますけど。」
「試合終盤、当然エースの翔太が自分が決めてやるって思うじゃないですか。
そこで、ちぃちゃんやかなちゃん、そして他のみんなを信じてパス出来るかどうか。
まあ、大鷹は翔太が自分で決めにくるって当然考えます。
そこが、逆にひよこのチャンスなんですが。
裕太、孝太が、翔太を納得させることが出来るかどうかが鍵になります。」
「でもあの3人なら、私きっと出来ると思うんです。
根拠ないですけど。」
「はははっ、広田先生に一本取られました!」
「2人に、朝おはようって言ってくれたこと、嬉しかった、ありがとって言ったら、そんなの当たり前だよって言ってくれたんです。
ひよこが勝つためなら、翔太くんも当たり前にやってくれると思うんです。
根拠ないですけど。」
「根拠なんて、本当はいらないんですよ。」
「そうなんですか?」
「根拠なんてなくても、我々教師が児童、生徒を信じていればそれでいいんです。
それこそ、当たり前のことです。」
「本当そう、当たり前のことですね!」




