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異世界猫に異世界宮殿の侵略から地球を守ってくれと頼まれた件  作者: アルケミスト


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 翌日、ローユンと貴奈津が謝り、月葉もわびを入れたので、いざこざは一応の収拾をみた。


 ぎこちなくはあったけれど月葉が笑みを向けたので、ローユンの喜びは一入だった。


 ローユンはしっかりと月葉を抱きしめた。


 これはいつものローユンのパターンである。


 ぜんぜん嬉しくなかったが、月葉はじっと耐えたのだった。


 朝食はとりあえず家ですませて、貴奈津、月葉、ローユンとイーライ、それに二人の異世界猫は、揃ってレイの小型宇宙艇に乗りこんだ。


 下から異世界宮殿を見上げるのは鬱陶しい、どうせ監視するなら上空からにしよう。


 という、レイの提案によるものだ。


 東京と、その上に居すわる異世界宮殿を、眼下に一望できる位置に宇宙艇は浮かんでいた。


 あまり高速で移動すると上手くいかないのだが、停止しているぶんにはプロテクトが効いている。


 地球人の科学力では、宇宙艇の姿を捕らえることは出来なかった。


 もちろん、肉眼でも同じことだ。


 ソファーとテーブル以外なにもない、およそコックピットらしくないコクピットに、貴奈津と月葉、ゴーシュとレイがいた。


 監視をこの四人にまかせ、ローユンとイーライは別室のコンピュータルームに行っている。


 ドーム形の天井まで届く、コクピットの超大型メインスクリーンに、異世界宮殿を中心にして俯瞰した東京が映っている。


 関東地方は晴天だった。


 東京の密集するビル群の上に、くっきりと異世界宮殿の影が落ちていた。


「じゃあ、ゴーシュって化学者なのね」


 パンダ座りしているゴーシュの隣で、貴奈津も床に腰をおろしている。


「うん、バイオ関係。

 お医者さんも少し出来るよ。

 だから、これ救急セット」


 床に店開きして、ゴーシュが得体の知れない道具一式を点検している。


 背負ってきたリュックの中から取り出したものだ。


 膝にレイを乗っけて、月葉はソファーにかけていた。


「用意がいいんだな、ゴーシュは」


 興味をひかれて月葉も覗く。


 液体の入った色とりどりのアンプル、ビン入りのゼリーのように見える錠剤、箱入りの薄紙らしきもの、等々があったが、なにしろ異世界猫用である。


 用途はとうていわからない。


「ボク、戦闘時は救護班やるからね。

 眞鳥は空母に乗りこまないから、四人の分作っとこう」


 透明ケースをあけて、鉛筆を半分に折ったほどのガラス管を、ゴーシュは数本取り出した。


「はい、貴奈津、手を出して」


「え? まさか注射じゃないでしょうね。

 痛いのいやよ、わたし」


「痛くなーい」


 言いながらゴーシュが、貴奈津の腕にガラス管の尖ったほうを押しつける。


 ほんの一瞬チクリとする。


「痛いじゃない」


「そんなはずないよ。どれどれ」


 別のガラス管を、ゴーシュは自分の腕に押しつけた。


「ウッ」


 小さな悲鳴を上げて、明らかに痛そうな表情をする。


 しかし、すぐに顔をふって平静を粧う。


「ぜんぜん痛くなーい」


「……あんたたちって」


 これで、誤魔化したつもりなのが、どう考えても貴奈津にはわからない。


 レイもこういう見え見えをよくやるのだが、たんにレイが抜けているだけだと、今まで貴奈津は思っていたのだ。


 しかし、もしかすると異世界猫の、種としての特性なのかもしれない。


「ゴーシュ、それ、なんの注射かな。

 危険はないわけ、副作用とか」


 月葉は半袖シャツを着ていた。


 狙われそうな腕を背後にまわして質問する。


「注射じゃないよ。

 生きてる細胞のサンプル、ちょっともらうだけ」


 ゴーシュはすでに新しいガラス管をかざして、月葉の前にせまっている。


「その用途を述べよ」


 地球人の倫理観が、異世界猫には通用しない場合もある。


 自分の細胞を、遺伝子操作など、おかしなことに使われてはたまらない。


「培養して、人間用の治療薬を作っておくの」


「それならいいかな」


 肯いて、月葉は腕を差し出した。


 百パーセント信用したわけではないが、異世界猫がそうそう悪巧みをするとも思えない。


 たいした痛みではなかった。


 肌にも傷らしい傷はついていない。


 ゴーシュはガラス管にそれぞれ「貴奈津」「月葉」と名前を書き込み、丁寧にまたケースに戻した。


 それからリュックを引きよせ、荷造りを始める。


 ぼんやりと、その様子を眺めていた月葉のひざで、レイがピクリと耳を立てた。


「ゲッ!」


 叫んで浮き上がり、スクリーンを見上げる。


「レイ、どうした?」


「探知機が警報をよこした。

 異世界宮殿に動きがあるみたいだ」


「また、なにか出てくるのかしら」


「違う。

 異世界宮殿が自分たちを守るバリアーを解除しようとしているんだ」


「前にもあったわよね、そういうこと。

 異世界宮殿へ乗り込んだときにもバリアーは解除されてたし、あとは、ええっ!

 まさか」


 ぎくりと顔を見合わせ、貴奈津と月葉が声をそろえる。


「ハイパー・レーザー砲!」


 使用されたのは一万八千年前に一度きりだが、その恐ろしさは身に染みている。


 そのときは予測できなかった。


 すなわち、防げなかったということだ。


 異世界宮殿のハイパー・レーザー砲は、一瞬にして地平線まで火線を走らせる。


「見て!」


 異世界宮殿の側面、無秩序な構造物のあいだから、ビルほどもある円筒型がせり出してくる。


 筒の内部で白光が強さを増す。


「ウガッ、ま、まずい」

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