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異世界猫に異世界宮殿の侵略から地球を守ってくれと頼まれた件  作者: アルケミスト


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 先程の運転とはうってかわり、ローユンはゆったりと深夜の幹線道路を流していた。


 貴奈津に見覚えがあったのも道理で、グレーとシルバーのこのクーペはイーライが眞鳥邸に持ちこんでいる車だった。


 それをローユンが借り受けていたのだ。


 あまり目立たないタイプの車なのは、イーライの趣味ではなく職業的な選択だろう。 派手なスポーツカーで、尾行するわけにもいかない。


 ただし、大人しげな見た目を裏切る性能は隠し持っている。


 対向車のライトに照らし出されるローユンの横顔を見ながら、貴奈津はニタニタ笑いを浮かべていた。


「わたしのことを心配して、わざわざ迎えに来てくれたのね、ありがとう、ローユン」


「……いや、感謝してもらうほどのことでは」


 さきほどの異常現象は、一瞬の世界の揺らぎが引き起こしたものだ。


 したがって、ローユンとしては仲間の身の安全を確かに気にかけてはいたが、月葉でもイーライでもなく、貴奈津を迎えに出たのにはわけがある。


 一番手近なところにいたのが貴奈津だったのだ。


「あれだけで済んでよかったが、シールドが大きく揺らぐようなら、こちらも対処に向かわなければならない。

 そのために貴奈津一人だけでも、そばにいてもらいたかった」


「あっ、大丈夫だったの?

 異世界宮殿のシールドは」


「問題ない。

 今回の物は直接シールドに影響するほど、強い圧力ではなかった」


「よかった、とりあえず」


 胸を撫で下ろし貴奈津がシートにもたれこむ。


 ローユンはウインカーを出して車線変更にかかっていた。


 中央分離帯によると、減速しながらハンドルを右に切る。


「そういえばローユンって、いつのまにあんな運転の仕方を憶えたの?」


 クーペは今は静かに、夜の田園調布を走っている。


「たいがいのことはね、貴奈津、睡眠学習ができる。

 レイの宇宙艇にカプラーがあっただろう、あれを使えば」


 カプラーと聞いて、貴奈津が顔をしかめる。


 仮想現実空間で、ひどい目にあったのを思い出したのだ。


 しかし、だからこそ肯ける。


「なるほどね」


「実地では、イーライに教わった」


「彼って面倒見がいいものね。

 ……あっ!」


「どうした」


「イーライで思い出したけど、わたし、彼に月葉の足止めを頼んだのよね。

 月葉より先に家に帰ろうと思って。

 でも、もう間に合わないかもしれない」


 貴奈津の意図がなんなのか、ローユンにはまったくわからなかった。


 だが、目的は理解できる。


「気になるようなら、調べてみよう」


 カーナビに触れ、ローユンの指がキーをいくつか叩くのを、貴奈津はまばたきして見ていた。


 どうやって、なにを調べるのか


 カーナビの画面が広域に切り替わり、光点が表示される。


「月葉はそこにいる。

 だとすれば、到着はわたしたちのほうが早いと思うが」


「ここって、渋谷じゃない。

 でも、どうしてカーナビで、月葉の位置がわかるのよ」


 貴奈津がディスプレイを睨む。


「もしかしてこれ、ただのカーナビじゃないわね」


「わたしは使用法を教わっただけなので、くわしくは知らないが、イーライとレイが、共同開発したシステムを組みこんであるそうだ」


「イーライって変な人だとは思っていたけど、ほんとに変わっているわね。

 猫といっしょにシステムを開発するなんて、普通人には考えつかないことよ」


「柔軟性に富むという表現もできるな。

 このカーナビは、貴奈津やわたしの位置もとらえる」


「ええっ、それってすごく困るわ、わたし」


 スクールヘ行くふりをして、じつは違う、という手が使えないではないか。


 貴奈津の困惑は、今度はローユンにもわかった。


「大丈夫、イーライはそのあたりは検索しないし、わたしにしても、きみたちの位置さえ掴めればいい。

 レイが正常な状態であれば、このシステムを使う必要もないのだが」


「ちょっと待って。

 どういうこと、それ」


「先刻の世界の揺らぎ、あのときレイが倒れた」


「なんですっ!

 どうしてそれを先に言わないのよ、誰にやられたのよっ」


 運転中のローユンの腕を掴み、貴奈津がわめく。


「頭痛だそうだ」


「……は?」


 貴奈津は身を乗り出したまま、ストップモーションした。


 ローユンの横顔をまじまじと見る。


 冗談を言っているわけではなさそうだった。


 ともあれ、頭痛くらいで大さわぎすることもあるまい。


 すでにクーペは、眞鳥邸にほど近い高級住宅街に入っていた。


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