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異世界猫に異世界宮殿の侵略から地球を守ってくれと頼まれた件  作者: アルケミスト


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「……好きの質が、違うと思う」


 ようやくの貴奈津の言葉は、月葉の希望には程遠かった。


「どういう意味だよ、それ。答えてよ、貴奈津」


「真剣な顔でせまらないでよ、なんか月葉こわいわよ」


「あ、ごめん」


 やや冷静さを取りもどし、月葉が手を放す。


 深読みしない貴奈津の性格がありがたいと、つくづく思う。


「あのね、質が違うと言ったのはね、月葉はわたしにとって、もう一人の自分みたいな感じなのよね」


「もう一人の自分?」


 オウム返しに月葉が呟く。


「そうなのよ。

 月葉とわたしは、なにもかも、全然違うんだけど、それでも魂の半分っていうのかな、分身のような気がする」


 貴奈津は真剣に、月葉の質問に答えようとしていた。


 茶化していいときと、悪いときがある。


 貴奈津にもそれくらいはわかるのだ。


 しきりと首を傾げながら、もっとも適切と思われる表現を貴奈津は探した。


「こういうのって、変かしら?」


「わからない。

 ぼくは、そういう考えかたをしたことはなかったから。

 でも斬新な感覚ではあるな」


「だから、わたしが月葉を好きなのは、たぶん特別な「好き」なのよね」


 それが自分にとって、都合のよい特別なのか悪い特別なのか、月葉は少し掘り下げてみた。


「血がつながった姉弟だから特別、ということ?」


「違うと思う。

 わたし、つねづね思っているんだけどね、だいたい姉弟ってなによ?

 兄弟、姉妹、色々あるけど、生物学的に血がつながっているから肉体は、そりゃあちょっとは似ているわよ。

 だけどね、心はまったく別物じゃない。

 他人と同じだと、わたしは思うのよね」


「いいこと言うよ、貴奈津にしては」


「なに、その態度。

 人がまじめに考えてあげているのに」


「悪い、悪かった、それで?」


「と、いうわけでね、月葉は姉弟だからということじゃなく、やっぱりわたしにとっては特別な、世界でただ一つの「好き」なのよね」


「とりあえず嬉しいよ、ありがとう。

 じゃあローユンのことは?」


 さりげなく月葉は核心に迫ったつもりだが、貴奈津は肩を竦めて手を広げた。


「正直いって、わかりません」


「なんだよ、それは」


「だってあの人、人間のようでいて人間でないような。

 すごく親しい人のようで、近寄りがたいような」


「ただの男だよ」


「あら、ただの男じゃないわよ、ハンサムよ」


「ハンサムなら誰でもいいわけ、貴奈津は!」


「なにを、むきになってるのよ」


「べつに」


「ローユンは心の強くて優しい人よ。

 わたし、そういう人って好き。

 しかもハンサム。

 だから好きなのは間違いないけど、わからないんだなあ、どういう意味で好きなのかは。

 ナーディの記憶のせいかしら、ナーディはすごくローユンが好きなのよね。

 でもそれは、かけがえのない仲間というか、運命共同体というか、そんなふうな感覚の「好き」なのよ。

 完全に親友感覚よね。

 わたし、その意識にじゃまをされていて、本当の自分の感情がよくわからない。

 ねえ 月葉、わたしってローユンのこと、もしかして恋愛感情でもって好きなのかなあ」


 天を仰いで、月葉はベッドに倒れこんだ。


 両腕で顔をおおってしまう。


「ああっ、聞くなよ、ぼくにそんなことを」


「月葉が赤くなることないじゃない」


「うるさい」


「でも、ムフフ。

 ローユンとイーライ、ハンサムが身近に二人もいるのよーん。

 これって、かなり幸運な状況よね」


 月葉は慌ててはね起きた。


 真顔で貴奈津の腕を掴む。


「イーライだけは、やめておいたほうがいい」


「ほほー」


 貴奈津が意味ありげに目を細めた。


 そのわけを月葉はわからなかったが、忠告を真剣に聞いていないことはわかった。


 月葉は本気で危惧を抱いた。


 あんな無節操で恥知らずな男にだけは、けっして近づいてほしくない。


「冗談で言っているんじゃない、あの男は……」


「わかっているわよ」


「は……?」


「イーライは月葉のことが好きなんだものね。

 だからとりあえず、わたし、イーライのことは、あきらめよ」


「な……?」


「なぜ知っているかっていうの?

 だって、イーライがいつも言っているもの」


「……うそだろう」


「うそじゃないわよ。

 ま、とにかく、わたしも割りこんでオジャマ虫にはなりたくないしね」


「誤解だ!

 貴奈津は物凄く誤解している! ぼく……」


 突如、冷静さを失って叫き立てる月葉を、貴奈津が不思議そうに見る。


「うん、それも知ってる。

 月葉には嫌われているって、イーライが言っていたから」


「……」


「でもやっぱり、イーライのじゃまをするのは悪いじゃない」


「悪くない!

 いや、ちょっと待って……」


 どのような理由であれ、それで貴奈津が、イーライに近付かないというのであれば、ここはよしとするべきではないか。


 月葉はそう、思いを巡らせたのである。


 貴奈津には、そんな月葉の心の動きが読めるはずもない。


「ちょっと待てというところをみると、もしかすると月葉って……フフフーン」


「違うっ!

 勝手に解釈しないでくれ」


「はい、はい」


 ベッドから立ち上がり、貴奈津はドアに向かって歩き出した。


「あの……ちょっと、貴奈津……」


 引き止めようと思わず持ちあげた手が、空を掴んで虚しい。


「わたし、レイに用があるのよ。

 あんまり待たせると、あの猫うるさいから」


 じゃあね、と手を振り、貴奈津はドアを開いた。


 廊下へ出て、閉じかけたドアから顔を覗かせる。


「あんまりイーライとケンカしないのよ」


 ドアが閉じるまえに、月葉はベッドに倒れこんでいた。


 気力が尽きたのである。


「せんぜん、わかっていない」


 一人天井を睨んで呟く。


「あの男が、どんなにしようもない男かってことに。

 イーライなんて最低だ」


 舌打ちして、月葉はうつ伏せた。


「それなのに、なぜぼくは!」


 手荒く毛布を引きよせ、頭からかぶってしまう。


 月葉はまた、新たな葛藤をかかえこんでしまっていた。


 そのまま月葉は、長いこと身動ぎもしなかった。


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