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異世界猫に異世界宮殿の侵略から地球を守ってくれと頼まれた件  作者: アルケミスト


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 電撃はレイの唯一の特殊攻撃である。


 とはいえ、密かに身に着けている電子機器から発生させる電気的エネルギーなので、それほどたいしたパワーはない。


 それを知っているからこそ、レイは仕返しに電撃を使用する。


 だが、打ちどころが悪いということはある。


「あれっ?」


 レイはぐったりと手すりに伏せる貴奈津を覗き込んだ。


 毛皮があるので、外からはわからないが、レイの顔から急速に血の気が引いた。


「は、は、月葉っ!」


「どうしたんだ」


 声と共に、月葉がバルコニーヘ飛び出してきた。


 そのとき、貴奈津がゆっくり顔をあげた。


 両手で手すりを掴み、体を起こす。


 しかし、その目は閉じられたままだ。


 貴奈津の全身を青白色の淡い靄が包んでいるのに、月葉は気付いた。


 平常時であれば目には見えない霊気的エネルギー波、つまりオーラである。


「レイ、これはいったい?.」


 触れるのが躊躇われ、月葉は為す術もなく貴奈津を見つめた。


「トランス状態に入っちゃったんだ。

 異能力者がトランスにおちいると、ボクの手には負えないぞ。

 どうしよう」


「と、言われても困る。

 こんなのは、はじめて見た。

 貴奈津の身に危険はないんだろうか」


「それは大丈夫だ。

 本人は宇宙エネルギーそのものみたいに安全だ。

 おい、月葉おまえ、恒星が爆発しても耐えられるくらいの障壁張れるか?.」


 月葉は即座に首を振った。


「いや、無理だと思う」


「かもな。

 攻撃型異能力者というのは、不器用なとこがあるからな。

 と、なるとローユンがいない、今……」


 貴奈津の顔がすっと仰向いた。


 レイが短い悲鳴を上げて宙を後退り、月葉の手を取った。


 いざというとき、月葉を防御壁に入れるために。


 次の瞬間、天空から稲妻が走り、バルコニーに落雷した。


 月葉とレイには、そう見えた。至近に落雷したとしか思えない。


 激しい放電現象が大気を切り裂き震わせる。


 閃光と衝撃、そして轟音。


 建物全体が揺れた。


 シールドを張る前にレイは引っ繰り返り、月葉は床に張り付いた。


 音と揺れはすぐにおさまったが、月葉はしばし起き上がれなかった。


「わたしはここにいる。

 あなたもやっと戻ってきたのね」


「ナーディ、きみが来てくれるとは思わなかった。

 ありがとう、再会できてとても嬉しい」


 そんな会話が聞こえたような気がしたが、月葉の視界は真っ白だった。


 閃光に目が眩んでしまっていた。


 目蓋を押さえ、頭を振る。


 ようやく視力を取り戻し、最初に月葉が目にしたのは、あろうことか貴奈津をしっかり胸に抱きしめる、異国の青年の姿だった。


 ローユンがついに実世界にその姿を現したのである。


 レイならば、感涙にむせんだかもしれない。


 しかし、月葉はたちまち怒りに包まれた。


「あいつ、一度ならず二度までも!」


 飛び出そうとした月葉の出鼻を、派手な衝突音がくじいた。


 イーライが力任せにあけたドアが、その勢いで壁にぶつかり跳ね返ったのだった。


 月葉はバランスを崩して、床に手をついた。


 普段ならこんなことにはならないのだが、


 いましがたの落雷に似た衝撃が尾を引いていたらしい。


「月葉!」


 かけよりイーライが月葉を支える。


 倒れているレイには見向きもしない。


 そんな余裕はないのだろうが、最初から気にしていないのかもしれない。


 イーライは銃を、まっすぐローユンに向けていた。


 職業的な反射行動だった。


「貴奈津、月葉!」


 かけつけてくる眞鳥の叫び声が聞こえた。


 二階にいた眞鳥が、一階にいたイーライより到着か遅いのは体重のせいか、脚力のせいか。


 眞鳥のあとに、複数の人間の足音が続いていた。


 眞鳥家のガードマンや、執事の牧野の足音だ。


 あれだけの音と衝撃がしたのだ、ただならぬ事態が生じたと思って当然だろう。


 息を切らして、眞鳥が部屋に飛びこんできた。


 月葉が、


「大丈夫だから、ドアを閉めて誰も入れないように」


 という指示を手まねでする。


 眞鳥は非常事態の月葉の対応に信頼を置いている。


 すぐに肯くと、廊下へ戻った。


 ドアを閉めながら眞鳥が、


「なんでもなかった。

 貴奈津がおかしな機械を壊しただけで……」


 と言いわけを始めるのが聞こえた。


 とりあえず、そっちのほうは心配ない。


 月葉はローユンと貴奈津に目を戻した。


 いまだにローユンは貴奈津を抱きしめていた。


 側にレイが浮かび、いつの間にかイーライも側で興味深げにローユンを見ていた。


 立て続けにじゃまが入ったので、さっきほどの勢いはないが、またもや怒りが込み上げてきた。


「貴奈津に気安くふれないでくれ!」


 月葉はつかつかとローユンの側へ歩み寄った。


 二人を引き離そうと手を伸ばし、貴奈津が気を失っているのに気づいた。


 では、ローユンは貴奈津の体を支えていただけなのか。


 いや、しかし。


 そこへ、レイが声をかけた。


「トランスは抜けた。

 ちょっと叩いてみたら目を覚ますんじゃないかな」


 レイから貴奈津へ目をうつし、言われたように月葉は貴奈津の頬を数度叩いてみた。


 すると、あっけなく貴奈津は目を開けた。


 一同がほっとする。


 貴奈津は朝の目覚めのときより正気だった。


 トランス前に目蓋を閉じ、今また開いたくらいの感覚なのだろう。


 ただし、その間に時間と状況は動いている。


 したがって、貴奈津は目を開けたとき、自分がどこにいるのかわからなかった。


 バルコニーの手すりにもたれているにしては、なんだか暖かくて柔らかいと思い、自分の足で立つと、目の前を見上げた。


「きゃーっ!」


 貴奈津はバッとローユンから身を放した。


 月葉が引き離すまでもない。


 しかし貴奈津は、


「きゃーっ!」


 などと言うことはいったが、誰が聞いても、それは悲鳴とは思えなかった。


 声がはずんでいた。


 だいたい顔が嬉しそうだ。


 月葉は溜め息とともに、眉間を押さえるしかなかった。

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