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第15話 もう1人の勇者

 洞窟の中は暗く。空気は湿っていて、壁を触れだざらついた岩肌の感触が伝わってくる。


 ケルベロスーー

 やつは洞窟の奥に生息しているようだ。


「エルセーヌ…火を頼む」

「任せて!《フレイムライト》!」


 エルセーヌの火炎魔法が灯る。魔法の灯りが揺らめくたび、岩壁に不気味な影が踊る。


「やっぱり怖いわね…洞窟って」

「怖いなら帰ってもいいぞ、フィリア」

「誰が言ったのよ、それ。実はあなたも怖いんでしょ?」


 俺たちが軽口を交わせられるのは、まだ余裕のある証拠だった。


 その時だったーー


 ーーザザッ!


 突如、洞窟内に不穏な足音が響き渡る。


「来るぞ!」

「お前たち、気合い入れろ!」


 俺はすかざす仲間に声を飛ばす。



「ケルベロスの足音か?」

「多分ね。サンドル、防御頼むわね」

「あぁ…任せろ。特に炎技は俺のオハコだからな。任せろ…だが、ちょっと緊張するな…」

「それはアタシも同じ!多分2人も緊張してるよ。でも大丈夫!アタシたちは勇者パーティー。ドラゴンだって討伐できたじゃない!」

「そうだな。ありがとうエルセーヌ」

「私も頼りにしてるよ!あなたの筋肉!」

「ガハハ!ありがとうな。任せろ!」



 士気は上がった。緊張の中にも確かにある連帯感。俺も勇者として、みんなの覚悟に応えなくてはならない。


 それにーー


 このままアルターに負けっぱなしで嫌だ!


 このクエスト絶対成功させてみせる!




 ーーと気合いを入れ直したその時だった。


「《剣聖》の天賜よ……我が魂に応えよ!」


「ちょっとレイン!なんで必殺技唱えてるのよ!まだケルベロス見えてないよ!」


「いや…俺じゃない…」


「えぇ…!じゃあ一体誰が…」


闇絶陰剣カレトヴルフ


 この言葉を最後に、意識が闇に沈んだ。

 俺たちは、正体不明の一撃により、一瞬で意識を断たれたのだった。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

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