3-2
優明は痛みを我慢していた。
へたに病院へ行ってしまうと残りの試合がすべて棄権となってしまうのが嫌だったからだ。
なんとしてもここで爪痕を残さなければならない。
年齢的にも体的にもガンが発症したりときつい状況だからこそ今回は踏ん張りどころだと考えている。
1週間後には次の試合がある。
不思議なことにその1週間で痛みも減ってきたし体の動きも元に戻っていった。
優明にはまったくわかってなかったがその裏ではオカダくんが孤軍奮闘していた。
オカダくんにもよくわかってなかったが宿主の異常には気づいていた。
それこそ不眠不休で宿主の体の修復作業を行っていた。
その適切なる医療行為(?)のおかげもあって優明の骨折なんかもみるみる回復していった。
次のイメージスタジオ109四谷スタジオでの試合には万全の肉体で出場できることになった。
相手の選手は新人だ。
優明より10歳も若い。
試合経験は初めてといってもよいのでは?
優明は相手選手のことは名前程度しか知らなかった。
試合直後から相手はガムシャラに攻めてくる。
いきなり防戦中心にされてしまった。
若いからというのもあってなかなかスタミナのある選手だった。
気づけば追いこまれていたのは優明のほうだった。
相手は新人とは思えないほどこなれているというか巧みな闘い方をしてくる選手だった。
新人ということで甘く見すぎていた優明のおごりもあって敗退だった。
部屋に戻ると、あれ肩が上がらない?
足も腫れ上がっている。
これは?
脱臼やら炎症やらが酷い状態だった。
前回と同様に痛みがある。
その痛みのピークは試合翌日。
あとは1日すぎるごとに痛みも薄らいでいって体の動きも正常になってくる。
優明は、これを自分自身の不死身性じゃないのかととんでもない思い違いをしている。
1週間もあれば完全復活してるのだからそう思っても仕方ないというところもある。
まさか自分の体の中にオカダくんがいるとはぜんぜん知らないのだから。
次は竹芝ニュービアホールだ。
優明と同じくらいの年齢の選手なんだがすでに実績も積み重ねている。
向こうにとっては軽い試合かもしれないが優明にとってはこの試合ではなんとか勝ちたいと思っている。
いよいよもう後がない。
必死でくらいついていかないと次の試合が決まらない。
そうなると自然に引退ということにもなりかねない。
いざ試合をやってみると圧倒されてしまう優明だった。
黒星を積み上げてきた実力のある選手には到底かなわない。
強弱をつけてくる試合運びもうまくて完全に相手のペースだった。
声援を浴びるのも相手選手ばかりで優明にとってはアウェイ感もあった。
言い訳がましいがそういった心理的な圧迫もあって実力を出しきれなかった。
そう思いたい。
これで3連続負け。
しかも全身が痛い。
どこがどんな風にってのがわからないほど痛い。