あーかい部! 10話 お隣さん
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!
趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!
同じく1年、青野あさぎ!
面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!
独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河!
そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
「ふあぁ……。」
あさぎは1人、部室で微睡んでいた。
「月曜から寝不足か?」
ひいろ入室。
「ちょっとね……っていうか、このやりとり教室でもやった。」
「やったな。」
「ふあぁ……。」
「少し寝るか?」
「ひいろの前では寝ない。」
「なんだ人を煩悩の権化みたいに
「権化だよ。」
「……また趣味か?」
あさぎの趣味はケータイ小説である。
「違う、隣の部屋がうるさくて……。」
「特等席じゃないか。」
「黙れ煩悩の権化……!」
「どしたん?話聞こか?」
「……引っ越し。」
「あさぎ引っ越すのか?」
「隣がね。」
「ああ、そうか。じゃあしばらくは静かに寝られるんじゃないか?」
「出て行く方ならね。」
「……来るのか。」
「来る。」
「じゃあこれから賑やかになるな!」
「だから困るんだって。」
「ん?……まてよ。お隣さん、夜に引っ越ししてたのか?」
「いや、昼。業者の人だし。」
「……生活習慣直したらどうなんだ?」
「やだ。お昼に寝るのってプレミア感あるし。」
「それはわかる。」
「隣人ガチャやだぁ……。」
「課金すれば?」
「再抽選とかないからね?」
「いや、防音シートとか。壁に貼るヤツがあるだろう?」
「確かに課金だなぁ……。」
「その口ぶりだと、挨拶とかもまだなんだな。」
「いや、来てたみたい。」
「『みたい』って……。あ!寝てるじゃないか!?」
「うん?……うん。なんか風来坊っていうか、バックパッカーみたいな人だったって。」
「随分と抽象的だな。」
「でも愛想は良かったって。」
「そりゃあ、バックパッカーだもんな。」
「バックパッカーって愛想良いの?」
「さあ。マンションだとお隣さんと壁1枚なのか。……何だか落ち着かないかもな。」
「ひいろは一軒家だもんね。」
「古いけどな。」
「一軒家だとお隣さんって気にならない?」
「マンションほどは気にならないな。犬とかもいないみたいだし。」
「そっかあ。良いなぁ……。」
「そうとも限らないぞ?マンションだったら起こるお裾分けイベントとかも無いしな。」
「それは2次元だけじゃない?」
「世知辛いな……。」
「下手したら通報される時代だからね。」
「あさぎは、お隣さんはこんな人が良いとか考えたことないのか?」
「空室。」
「夢を持て夢を。」
「夢、ねえ……。」
「年上のおっとりお姉さんに『作りすぎちゃって……///』とか言われながら肉じゃがをタッパーでお裾分けして欲しいとか、他校の後輩に勉強教えてあげて良い点取ったら『ご褒美が欲しいな……///』って自室で迫られるとか……もっとこう、あるだろう!」
「ごめん、ちょっと考え直していい?」
「もちろんだ!」
「ひいろとの関係について。」
「すみませんでした。」
「……まったく、せめてもっと現実的なシチュエーションを考えてよ。だいたいなんで全部受け身なのさ。」
「そ、それは別に良いだろう!?///そういう癖なんだから!」
「やっぱり明日から他人でお願いします赤井さ
「すみませんでした。」
「……ひいろの性癖を否定するつもりはないけどさぁ、自分に都合よく考えすぎじゃない?」
「ならあさぎの考えるお隣さんってどんな感じなんだ?」
「そうだなぁ……風来坊っていうくらいだし、部屋はアトリエみたいな仕事部屋と……家具とかはあんまり無くて、代わりに旅先のお土産が散在してて……小さな博物館みたいな生活スペースと、それを管理する学芸員さんみたいな?」
「風来坊に引っ張られすぎじゃないか?もっと『こういう人が良い〜』みたいなの、さ?」
「……///」
「え?なんで目を逸らす…………もしかして、さっきのが理想
「うるさい……!///」
「うんうん、頑張ったなぁ。捻り出したんだなぁ……。」
「トイレで出すヤツみたいに言うなっ!」
「で?そんな風来坊お姉さんの部屋で、あさぎはどんな良いことをしたいんだぁ?」
「言わないぞっ!///」
「言わないってことはしたいんだな?」
「うるさい……!」
「いだっ!?脛はないだろう脛は!?」
「うっさい!ばーかばーか!///」
「ああ、これが現代文学年トップの語彙力か……よよよ。」
あーかい部!(4)
あさぎ:投稿完了っと。
きはだ:今日行けなくてごめんね〜
白ちゃん:きはだちゃんお休みだったんだ
きはだ:ちょっと用事で
白ちゃん:2人が何話してたのか気になるから読んでこよっと
きはだ:私も〜
ひいろ:お隣さん、もう会った?
あさぎ:まだ顔は見てない
ひいろ:壁コップした?
あさぎ:しないよ
あさぎ:っていうか古いな
ひいろ:実際のところ風来坊ってどんな感じなんだろうな
あさぎ:外国人なのかな
きはだ:なんだいなんだい?私のいないところで楽しそうなお話しちゃって
あさぎ:おかえり
きはだ:お隣さんイベントとか良いねえ
ひいろ:だよな
あさぎ:きはだも一軒家だったっけ
きはだ:そうだよ〜
白ちゃん:一軒家多いのね
ひいろ:白ちゃんはマンション?
白ちゃん:マンションだけどご近所さんの顔もまともに見たことないわね
きはだ:社会人だもんねぇ
ひいろ:大人って寂しいな
白ちゃん:やめろやめろ
きはだ:あさぎちゃんのお隣も干物かなぁ
白ちゃん:『も』ってなんだ
ひいろ:風来坊だし、お隣さんも私生活はルーズなんじゃないか?
白ちゃん:おい
ひいろ:おかしい……あさぎが乗ってこない
きはだ:お風呂かなあ?
あさぎ:ごめんごめん
白ちゃん:おかえり
あさぎ:白ちゃん先生って日本人ですよね?
ひいろ:なんだなんだ
白ちゃん:そうよ?
きはだ:お隣さん外国人?
あさぎ:どうなんだろう……
あさぎ:白ちゃん先生1人暮らしですよね
白ちゃん:ええ、今の家はかれこれ2年目になるんだけどね……
きはだ:白ちゃんに同棲相手なんていると思うのかい?
あさぎ:ですよね
ひいろ:だな
白ちゃん:おい