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もう少し先まで行き、私は歩くことに飽きてしまったのか、疲れてもいないのにそこの草の上に座り込みます。そして座禅を組んで目を閉じて、瞑想状態へと入っていこうとします。でも、心がなかなか静かになってくれません。私は座禅を解いてそこに横向きに寝そべります。寒くも暑くもなく、草が肌に触れる感覚がとても心地よく感じられます。ここで眠っても風邪をひく心配はなさそうです。
目を閉じて、すぐに眠りへと入っていきます。これまでになく心が素直になっていきます。素直な言葉たちが心に流れてきます。私は夢を見ます。
(オポ、私を慰めてくれるのか?ありがとう。でもいつまでも一緒に泳いではいられないのだろうな。一番最初の友達、最高の友達、最後かもしれない友達。オポはすぐにみんなの人気もの、それでいつしか私はオポを遠くの方から見ているだけになって……。子供たちがたくさん、オポと一緒に遊んでいた。私の体は十分大きくなっていたし、彼らの仲間に入るには年を取り過ぎていた。オポと子供たちが遊んでいるのを私は桟橋から一人でよく見ていた。オポはそんな私を気遣ってか、時々私の方へ泳いできてくれたりもした。うれしかった。遠くで見ていても、心の中ではいつもオポを呼んでいたから。ずっと一緒にプカプカ泳いでいたかったけれど……。短い夏だった。あの夏の魔法から、私はまだ解放されていない。)
司会者が出て来て、会場に向かってマイクでこう言いました。
「質問のある方はございませんか?」
私は座禅を組んだ状態で夢を見ながら眠っていたようです。不思議な夢でした。こんな遠い所まで来て、夢を見るという行為そのものも不思議な感じがします。眠りがあるということも不思議です。
司会者が言った後、すぐにいい質問が思い浮かびます。いたずらっぽい質問で聞くのにとても勇気がいるのだけれど、ずっと誰かに聞いてみたいと思っていた質問です。私は子供の頃から孤独癖が強いとても内気な性格で、このような大勢の人の前では決して発言などできる柄ではありません。しかし、この時ばかりは・・・そう、この時をおいて他にはありえない。
私が挙手します。私以外、挙手するものは誰もいない。司会者が「そちらの方、どうぞ」私に優しく言ってくれます。私は緊張しつつ、言います。
「あなた方は神を信じますか?」
一陣の風が私の周りを取り巻くように吹き、そして吹き去っていきます。風が吹いた後、とても静かになりました。すると辺りに見えていた人々やそれ以外にも何もかもが、一瞬のうちにスーと消えて、一枚の紙切れとその紙切れ一枚をただじっと見ている私だけがそこに残されます。私は紙切れを拾い上げ、そこに書かれてある文字を見ます。大きな黒くはっきりとした文字で、こうありました。
神を信じるか信じないか問うことの弱さ
人よ、強さよ、強き心よ
神を己に取り込め
そしてもはや神を問うな
神を考えるな
神を感じるな
目を閉じなければ。ここに何かが書いてあったとしても、私は何も考えなかったのだ。私が何かを語ったとしても、それは何も語ってない。
でも、もう遅すぎる。私は怖くなって惨めなお願い事をしてしまう。
私は絶対してはならない質問をしてしまった。「神を信じますか」という質問は「いなくなれ」と言うのと同じだ。私はそれを心のどこかで知りながら、あえて質問をした。私ならば許されるとでも思っていたのか?思っていたというよりも、何をしても許されたいという祈りにも似たものだったのか?いや、考えすぎだ。ただ何となしに、その場の雰囲気で?
でも、もうどうでもよくなっていました。そんなことはもう考えても仕方がない。目の前にはまた、先ほどと同じ暗いトンネルが待っているのだから。終わり、あるいは終わりなき終わりの始まりとして。
次の流れ星は、キキキ かな? カカカ かな? フフフ かな? ハハハ とか?流れ星に3回願い事を言うと叶うとか。私はそこでとてもたくさんのお願い事をしました。命、平和、希望、森、思いやり、博愛、いたわり、やさしさ、強さ、喜び、知性、正直さ、救い、翼、オネスティ、ホープ、ラブ・・・・・・。それらの言葉をそれぞれ3回づつ、流れ星を見る度に早口で唱えました。いつしか願い事のネタも切れて俗っぽい願い事しか思い浮かばなくなってくると、私は再び歩き出しました。あと4,5回トンネルを抜けることを繰り返し、私は戻ることになる。