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35-16

 駅員さんが私の方を見ています。私はその駅員さんを見て、覚悟を決めるとかそういうことではないのだなと思います。少し安心をして私は駅員さんの方にもっと近づいて行きます。

 もしもその駅員さんから私が切符を渡されて、「料金が必要です」とか言われたなら、「お金はありません」と言おうと考えて近づいて行きます。何も言われないならそれだけです。

 そう思いながら近づいていって、そして駅員さんは何も言わずに私に切符を手渡し、私は何も言わずに切符を手にし、その先には改札口のようなものは何もなくて、私は何も考えずすぐに列車に乗り込みます。

 列車の中の人もまばらです。人もまばらな列車の中のさらに人が少なく感じられる一区画を探しながら、列車の中を進行方向と同じ向きに歩いて行きます。そうして私は適当な席を進行方向の左側に見つけ、そこに腰を下ろします。

 車窓から見える風景は、やはりとても淡い桜色に染まった白いふわふわの綿菓子のようです。そのような風景が見渡す限りにずっと広がっていて、丘と天とがあって分かれているのですが、でも丘と天の色とは同じ色なのです。何か目印になりそうなものは何もなくて外の景色はそのような感じなのですが、列車の中の色も外の景色と同じ色になっていることに気付きます。列車の外壁も内壁も席の色も何もかもが、外の景色と同じ淡い桜色に染まっています。

 私はしばらく外の景色を見ていますが、同じような景色にはすぐに興味が沸かなくなって、ふと手に持っている切符に目をやります。切符には文字が書かれてあり、太くはっきりとした黒のゴシック体で“大討論会”とあります。

「討論会とは何となく世俗的だな、こんな所に来てまで・・・」

 私はそんな風に思います。

 でも、何だかぼんやり外を眺めていると、何だか知らないうちにいつ動き出したのか全然分からないうちに列車は動き出していて、何だか全然知らないうちに大討論会の会場に着いています。そしていつ降りたのかも分からないままに私は討論会場の席に座っていて、ステージの上にはもうすでに6人か7人の論者が席についているのです。

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