表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/54

31 M首相と目隠しなしの銃殺

M首相のことを男はよく思い出す。文部大臣などを歴任してから、首相に任命された。「日本は天皇を中心とした神の国である」という発言でも有名になった。神が中心になることはあるだろうが、人間である天皇が中心となることなどあるのかしらん、と男は思ったものだ。その発言が出た当時、日本のマスコミはあまりにも無批判だったので、男の知らないうちに日本語の遣い方が変わってしまったのかと心配になった。仮にもM氏は元文部大臣だったのだから。

男の周りには当時、政治心情が右寄りの知り合いがいた。一緒に食事をしている時に、その友人が粋がってこう言った。

「日本は結局、天皇を中心とした神の国だよね」

男自身はノンポリだったが、男はなぜか不愉快な気分になるのだった。

その友人の口からは、度々中国や朝鮮に対する批判も聞かれたが、元々天皇は大陸からやってきた渡来人ではなかったのか?百済王との繋がりを、平成天皇自身も言っている。「日本人は頭がいい」と多くの人が言うが、一体どこからが日本人なのか。中国や朝鮮を批判し、日本人の優位性を説いて気持ち良くなれるのであれば、男もそうしていたかった。

天皇を敬うとは、一体どういう意味なのか。そもそも天皇自身は、天皇をやりたくてやっているのだろうか。男には天皇が自分の人生を嫌々引き伸ばしているようにしか思えなかった。職業選択の自由さえない。無理やり天皇をやらされて、気の毒としか思えなかった。そのことを友人に聞いてみた。

「本当に天皇を敬ってるのなら、代わりに天皇やってあげたら」

「ああ、やるよ。もちろん」

本気だろうか。今の世の中に、天皇になりたい奴などいるのかしらん。

人生には二種類ある。目隠しされて銃殺される人生と、目隠しなしで銃殺される人生。男には、少なくとも自分が銃殺されかかっていることが分かっていた。しかし、どうにも目隠しが邪魔だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ