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24 鯨と大王イカ
「ワシらが束になれば、タンカーなんてすぐじゃよ」
鯨が隣で言った。
「ワシがスクリューに巻き付けば、原潜なんて」
大王イカが隣で言った。
「タコは?」
男が聞いた。
「奴はいつも余り乗り気ではない。だが奴が出るときは、いつももっと賢いやり方をする」
海亀が言った。
「あいつはいつも口ばかりだ。もっといいやり方があるはずだ、そればかりだ」
エリマキエイが言った。
「船が来る」
鯨の背中の上のカモメが言った。さっきまで流木だと思っていたのは、鯨の背だった。
そして誰もいなくなった。