20 銀河のイチゴショートケーキ
小学生の頃、学校の図書館で星の本ばかり借りて読んでいた。太陽の直径は地球の108倍で、ベテルギウスは太陽の3000倍で……。図鑑で針の先よりも小さな太陽の絵を見て、男はすっかり心細くなった。
今でも一等星の名前をほとんど覚えているのが不思議だった。天王星や海王星、様々な美しい銀河たち、それらが存在すること自体が神秘的で美しいことだった。漆黒の広い宇宙に浮かぶ木星や土星の巨大さ、シリウスのまぶしさとアンドロメダまでの永遠、そして地球の孤独と儚さ。
イルカがどこか遠くで鳴いている。せつな過ぎて泣いている。
イルカや鯨くらいは救ってあげられれば良かったのに。どうせ人は人を救うことなどできないのだから。
もしも今見上げている夜空が巨大なジグソーパズルだったとして、その中に巨大なイチゴショートケーキの星座が隠されていたとして、人はどのピースから組み始めればいいのだろう?全部組みたいのであれば、端の方のピースから組み始めた方が簡単でスムーズにことが進む。だが、人生何が起こるか分からない。パズルを全部組み終わる前にタイムオーバーしてしまうかもしれない。イチゴのピースから始めなければならない。イチゴが見えたら、後のピースはすべて惰性に代わる。