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17 デナリの凍傷バー

下らない夜に男は一人いつものバーにいた。バーの名前は北極圏。いつものようにウィスキーの水割りを飲んでいた。ジョン・コルトレーンの至上の愛がかかっていた。

酔いが回ってきた頃、店に一人の太った女性が入ってきた。

「お嬢さん、ずいぶんいい体格してるね。これから冬山にでも登るのかい?」

男は酔った勢いで言ってしまった。

「ええ、デナリにでも」

アラスカのマッキンリー山のことを、大概のアラスカ人はそう呼ぶ。デナリとは偉大なものという意味の先住民の言葉だ。からかったつもりが女性は山にかなり通じていた。

「お尻には凍傷の痕もあるのよ」

女性は言った。

「ふ~ん」

男は言った。うまく返すことができなかった。凍傷にかかった女性のお尻を想像して、気の利いたセリフ一つ吐けなくなっていた。会話はずっと女性のペースだった。男は身の危険を感じていた。

「君の脇腹、突っついてみたいよ」

男は言った。破れかぶれになっていた。

「どうぞ」

女性は言った。男は彼女の脇腹に触れた。自分の脇腹よりも弾力があるように男は感じた。

「君の脇腹、ぎゅっと握ってみたいよ」

「どうぞ」

彼女の脇腹は恐ろしく硬かった。男の脇腹とは比べ物にならないくらいに。男はいよいよ身の危険を感じた。

「あっ、いけない!犬の散歩に行く時間だ」

男は時計を見ながらそう言った。そして、そそくさと店を出た。男は犬など飼ったこともない。

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