4. お嬢様と添え寝
そうだった。僕はお嬢様と一緒に寝なければいけないのだった、しかも“毎日”
これはもう開き直って寝るしかないと思った僕は
「承知しました。ご主人様」
と彼女に向かって言った。そうしたら望み通りのはずなのに驚いた様子で
「えっ…いいの?」
と言われてしまった。自分から言い出しておいてなんで驚いているんだろうと首を傾げていると、
「だってお風呂とかはダメなのに、添え寝はいいの?」
と答えられた。
驚きすぎて彼女の喋り方がおかしくなっているが、そのまま僕は
「いいですよ」
と返した。そうしたらご主人様は戸惑いつつも笑顔になり
「それじゃっ着いてきて!♪」
と相変わらずのスキップで歩いて?行った。そうしてそのまま僕はお嬢様についていくことにした。
お嬢様は慣れた様子で自分の部屋に向かっていた。いやまあここが自分の家なんだから当たり前だが、
こんなにも広いと迷子になる人が一人や二人くらい出て来てもおかしくないはずと思った僕は彼女に
「お嬢様は慣れた様子で歩いていらっしゃいますが、迷子になったりはしないんでしょうか?」
と聞いてみた。そうしたら懐かしむような表情で彼女は
「昔はよくなってたのよ?いつも迷子になって泣いているところを見つかっていたわ」
とイタズラっぽく笑いながら言われた。
そりゃあ昔は迷子になるだろう。お嬢様にも普通の人間らしいところがあるんだなと思っていたら
「着いたわ、ここよ」
と大きそうな部屋の前で止まった。
そうして部屋の中に入りながら
「どうぞ、ここが私の部屋です!」
とドヤ顔で僕に部屋を見せた。
大きさは僕が元々いた孤児院の部屋の6倍はあるだろうか、さっき見せられた僕の部屋と比べても、3倍ほどの大きさは確実にあった。
ベッドやタンスだけでなく書斎か疑うほどの量の本棚まで全てが揃っている部屋に僕は感嘆しながらお嬢様に視線を移した。
そうしたらお嬢様はベッドに座り込み、隣に座って?とでもいうように自分の横をポンポン叩いた。
そして、僕がそこに座ると、お嬢様は
「大きくて綺麗な部屋でしょう?ほら、上を見てみなさいよ」
と言った。そうして言われた通りに天井を見てみると、そこには星の位置などが書かれた絵が描かれていた。
「お母様が考えたのよ?」
と僕に向かって彼女は話しかけてきたが、そこで僕は彼女の両親はどこにいるのだろうと思い
「お嬢様のご両親はどこにいるのでしょうか?」
と聞いてみた。そうしたら悲しそうな表情で彼女は
「両親は二人とも私が十才ぐらいの時に他界したの…」
と言った。しくじった、聞かなければよかったと思いながら僕は
「すみません、僕が無神経なことを言ってしまい…」
と急いで誤ったが、彼女は首を振りながら
「別にいいのよ、私がお母様のことを話に出してしまったせいだから」
と言った。そこで僕は彼女がとても心が広い人だと知った。
そうして彼女はいきなりイタズラっぽく笑い、
「忘れてないでしょうね?私たちはこれから毎日一緒に寝るのよ?」
そのままお嬢様は掛け布団の下に潜り込んだ。そして
「ここに横になって?」
と自分の隣を指した。
僕はベッドから一回立ち上がって反対側に行きベッドに入った。
そうしたらお嬢様は満足げな様子で照明を消した。
そのまま僕から何も話しかけなかったら彼女から
「女性と一緒に寝るのは初めて?」
と聞かれた。
女性以前に誰とも一緒に寝たことのない僕はとても緊張していたため、
「誰かと一緒に寝る自体初めてです。」
と答えた。そうしたら彼女はなぜか驚いた様子で
「ご両親と一緒に寝たこともないの?」
と聞かれてしまった。僕は
「物心つく前に両親を亡くしたので、記憶上初めてです。」
と言った。そうしたら親がいないのは自分ものはずなのに本当に申し訳なさそうな顔で
「本当にごめんなさい、いるのが当たり前だと思ってしまって本当にごめんなさい、、」
と今にも泣き出しそうな様子で謝ってきた。しかし両親がいないのはお互い様なはずなので少し話題を変えて
「急ですが、こんなにもの富があるのはなぜですか?」
時くと彼女は
「親が作った会社が大成功して、今も私が引き継いで会社がたくさん儲けているの」
と自慢げに話した。この歳で社長なんてすごいと思っていたら
「今日はもう疲れたでしょう?ゆっくり休んでくださいね、おやすみなさい」
と言われてしまった。そりゃあ今はもう夜遅いだろうし、すっかり忘れていたが僕もここに連れて来られた影響で二十四時間一度も睡眠を取れていないのだ。ということで明日に備えてゆっくり休むとしよう、と考えていたら、
「そうだ、あなた明日から日記をつけてちょうだい?」
と言われた。詳細を聞こうと思ったが彼女は既にあっちを向いてしまっていた。
まあ細かいことは明日聞こう。それではおやすみなさい
と僕の意識はゆっくりと闇に飲まれていった。