ゲンとラーちゃんの、カミナリのトレーニング
第6回なろうラジオ大賞参加作品です。
ゲンは、スライムのラーちゃんをテイムしているテイマーだ。主従関係はなく対等な友人関係。
旅を続けているある日、ゲンは唐突に宣言した。
「ラーちゃん、トレーニングしよう! いいよね!?」
何をトレーニングするかすら言わない。それでも、ラーちゃんは不思議そうにしつつも体を上下にプルプルさせた。これは肯定の返事だ。
やった、と思いつつ、それを表には出さずに「トレーニング」内容を告げた。
「よし! じゃあカミナリを使ってみよう!」
その言葉に、反射的にラーちゃんはやりかけて……そこで我に返ったようにゲンを見て、抗議するように跳びはねる。
「やろうってば。練習じゃなくて、トレーニングだよ」
ラーちゃんはカミナリの魔法が使えるが、コントロールができない。いつも自分の上に落としては、何とか避けている。危険すぎるので、何度も「練習しよう」と言っているのだが、そのたびにラーちゃんは拒否していた。
「やろうよー、トレーニング!」
もうちょっとだったのに、と思いながら続ける。
いつも練習と言っていたのを、言葉を変えて勢いでできないかを試してみたのだが、ダメだった。ラーちゃんは左右に体をプルプルさせる。これは否定だ。
「ダメだよ! 練習しないと、危ないんだから!」
言葉が、無意識に“練習”に戻る。
気持ちは分からなくはない。自分の上に落ちてくるんだから、やりたくないんだろう。でも、そんなことを言っていたら、いつまでたっても練習できない。
そんな必死なゲンに対して、ラーちゃんは少し考える様子を見せて……背中を向けて、逃げ出した。
「あっ!」
そうきたかと思いながら、ゲンは追いかける。
まだ子どものゲンでも、スライムのラーちゃんよりはリーチが長いから、追いつくのは難しくない。けれど、ゲンの伸ばす手をラーちゃんは掻い潜って逃げ続ける。
「コラッ、ラーちゃんっ!」
逃げるラーちゃんに、追いかけるゲン。
それは、お互いの体力に限界が来るまで続いた。
「あーもう」
ゼイゼイ息を切らしながら、ゲンはラーちゃんを見る。疲れたせいなのか、スライムの形が崩れてつぶれたようになっている。
「明日は絶対に練習するからね」
疲れちゃって今日はムリだと思って、ゲンはそう告げる。すると、ピョンと跳ねて形が戻ったラーちゃんが、嬉しそうに肩に飛び乗った。
その様子に、ゲンはジト目になる。
「もうっ! 調子いいんだから」
そんなゲンに、ラーちゃんは笑顔で体をこすりつけたのだった。