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リベルタ  作者: 紫雲朔音
一章 リベルタファミリー編
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新職場……?



「こ、ここが!?」

「えぇ、ここが僕の勤務先で柊さんの新しい職場です」


 目の前に聳え立つのは、多分十五階……以上かもしれねぇ。それぐらい大きな建物。ビル?みたいな。そう言えば、この辺りで高い建物ってあまり無かったから昔ここってなんなんだろう?って思ってたような。

呆然と眺めるオレに浅井は行きますよ。と声を掛けて歩き出す。


「お、おい!」

「そんな所でボーッとしないでくださいよ」


 扉を開けて中に入れば、まるで西洋の貴族の屋敷のような落ち着いた雰囲気に赤いカーペットや高そうなアンティークの家具や絵画が飾られていた。やばい。絶対に高い。


「あ!戻られたんですね冬樹様」

「ただいま。資料運びかい?お疲れ様」


 玄関ホールにいた右目が髪で隠れた緩い三つ編みの銀髪。メイドのようなロリータのような可愛らしい服を着た若い女の子が浅井に声をかける。

 ……まて、今"冬樹"って呼ばれてたか?


「いえっ!あの、そちらの方は……?」


 ちらりと浅井の影に隠れながら鮮やかな若葉の瞳がオレを捕える。女の子は人見知りなのか目線は合わないけど、可愛らしい子だな。


「彼は新人だよ。私が拾ってきたんだ」

「そうだったんですね。えっと……」

「あー、と。オレは柊翔真。貴女は?」


 出来る限り優しく、少し屈んで身長の差を埋める。ちょっとでも警戒といてくれればいいんだけど。彼女は一度息を吸って落ち着かせるようにゆっくり吐いた。


「か、茅名雪音(かやな ゆきね)ですっ!よろしくお願いします!」


 ガバッ!と音がなりそうなほど勢いよく頭を下げた彼女にオレも引きずられて軽く頭を下げていた。


「こちらこそよろしくお願いします」

「はい!あっ、では資料を運んでいる最中なので失礼します!」

「あ、はい」


 あわあわしながらだったが微笑みながらパタパタと走っていった。


「雪音ちゃん気をつけてね!」

「はい!」

「……茅名さん人見知りなのか?」

「打ち解けてしまえばなんてことないんだけど。さて、改めて紹介しようかな」


 そうだ、ずっと気になっていた。ここはどういう所なんだ?それに浅井の本名もだ。


「ここは『リベルタファミリー』。私は幹部の八雲冬樹(やくも ふゆき)。よろしくね柊くん」


 そんな事を考えていれば、この場所、新しい職場の名前が発表された。なるほど、リベルタファミリー……ん?


「ふぁみりー?まさか、ここマフィアなのか!!!?」

「大正解!」


 ドッキリが成功した子供のように笑う浅井こと、八雲冬樹。クッソ!そりゃ年収いいわけだ!死と隣り合わせだろうけどな!!!


「ふざけんなよ!帰るからな!」


 まさかそんな職場だとは思わねぇだろう!オレは勢いよく反転してさっき入ってきた扉目指して大股で歩き出す。


「おや?無職に戻るのかな?」


 もはや口調も違う。と言うかこっちが本当のコイツなんだろうけど。楽しげに笑いながら言われ、キッ!と睨み返しながら応える。


「当たり前だろうが!金より命だ!」


 そう言い捨てて、扉に手をかけた時だ。


「なら帰らない方がいいと思うよ」

「はぁ?何言って」


 オレが振り返ろうとした瞬間だった。首筋に冷たい感触。少なくとも三メートルは離れていた筈なのにいつの間にかナイフを片手にした八雲がオレの左後ろに立っていた。


「ここを知られてしまったのに、ただで帰すと思う?」

「ッ!」

「少しでも動いてごらん?その頭は胴体とお別れを告げるだろうね」


 ヤバい。あん時のカマキリなんて目じゃねぇぐらいにヤバい。逃げねぇといけないのに体がビクとも動かない。それぐらいに気圧されているんだ。同じ格上の相手でもただ暴れるだけのカマキリとは違う知性を持った人間だからこその恐怖。


「そもそも年収に目が眩んで説明を求めずに、ウキウキしながら車に乗ってきたのは誰?」

「そ、それは」


 確かに、迂闊に飛びついたオレが悪いけど。


「条件は悪くないと思うけど?」


 そうだけど!


「じゃあ、一旦私が君の借金の立て替えてあげよう」

「えっ!?」


 どういうことだ!?いや、それはめちゃくちゃありがたい事だ。何せ一日一回、場合によっては何回も最速メールに電話が掛かってきては酷い馬尾雑言を浴びせられ、返済を催促される。悪いのはオレってか、クソ親父だからオレはひたすら謝り続けるしかない。ストレスになるし嫌になる。それが無くなる……?いや、何か裏があるに決まって


「それで、私が払った分を少しづつ私に返してくれればいい。最低月に十万の返済。それ以上は無理な催促はしない。その代わり返済中はリベルタで働いてもらう。どうかな?悪い話では無いと思うけれど」

「……それじゃ、一生かかっても払えねぇぞ」

「構わないよ」


 条件は悪くない。今すぐあの苦痛が無くなると考えれば。


「分かった、分かった!でも、詳しいこと聞かせてくれ」

「もちろん。案内するからはぐれないようにね」


 月十万って言われたけど、もっと返済しねぇと辞められない。昇給とかあるならもっと返せるようになると思うし、生活費とかは抜いて月二十万返済したとして…………だいたい六十年って所か?ボーナスとかもあればもっといける。返済終わった頃には八十歳越えとか信じたくねぇけど、こうなったらやるしかねぇ!そもそも、やりたくなくてもやらなきゃ死ぬなら選択肢なんてないしな……!!!


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