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リベルタ  作者: 紫雲朔音
一章 リベルタファミリー編
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金貸しとの対話



「こ、これ全部現金ですか……?」

「そうだよ。手続きとか面倒くさいからパッと渡してパッと終わらせようね」

「は、はい」


 今、オレの手元にはアタッシュケースがある。ここに1億5000万入っているらしい。これを持ち歩くの怖すぎるだろ……!つい周囲を警戒しつつ街中をドキドキしながら歩く。やがて例の金貸しの事務所にたどり着いた。


「ここであってる?」

「あ、はい。ここの4階です」

「じゃあ行こうか」


 気が重すぎて一歩進むのにも体力を持っていかれているオレと違い、それこそ風のように軽い足取りで薄暗い雑居ビルの中に入っていく。

入ってすぐあるエレベーターがまるで処刑台への道に感じて逃げたくなるが、こっちは金がある。大丈夫、大丈夫と言い聞かせながら乗り込んでじっと待つ。やがて4階で止まって地獄の扉が開き、覚悟を決める。すぐ目の前が金貸しの奴らがいる部屋だ。


「上手く話し合わせてね」

「えっ」

「こんにちは」


 この人昨日からオレ達の心の準備させてくれないよな!?質問すらさせてくれねぇし!動揺を隠せないまま八雲さんに続いて中に入ると一気に6、7人の強面でガタイのいい男達の目線が集まる。


「あ?誰だアンタ」


 一人の男がこちらに威圧しながら低いがなり声で詰め寄ってくる。やっぱり怖すぎんだろ、もう逃げたい。


「俺は矢代秋人。柊翔真の借金を返しに来ました」


 誰だ矢代秋人!!!あ!そういうこと!?八雲冬樹ってことバラすなってこと!?


「柊翔真って言えば1億超の借金もちじゃねぇか。テメェが一括で返済してくれるって?」

「はい」

「……くっ、ハッハッハ!!!笑わせてくれるじゃねぇか!」

「何だ柊よぉ?金持ちのボンボンと知り合ったのか?」

「あ、えっと……」

「翔真は俺の友人です。最近たまたま会えたんですが、元気が無かったので話を聞けば父親のせいで大量の借金を抱えてる。なんて聞いたら助けてあげたくなるのが友情ってものでしょう?」


 とりあえず設定は友人なんだな。もしかしなくてもオレの対応力を試されている気がする。


「それだけ聞くといい話じゃねぇか。で?金はあるんだろうな」

「もちろん。翔真出して」

「あ、おう」


 オレがアタッシュケースを男達の所に持っていき開くと驚いた顔して八雲さんを見る。


「どうぞ数えて?1億5000万あるはずですから」

「おい数えろ」

「へ、へい!」


 そう言ってアタッシュケースを抱えて奥に行こうとする男。


「まさか裏で数える気じゃないよな」


 それを僅かに低くなった声が制する。な、何で?ダメなのか?


「ここで数えてよ。盗まれたら、たまったもんじゃないですから」


 客用の席に腰掛けて腕を組んで睨みつける。それに顔を顰めたトップと思われる男が舌打ちをする。


「社長」

「ここでやれ。お客様の希望だからな」

「分かりました」


 そんな危険性考えてなかった。でもそうだよな。オレに馬鹿みたいに高い利息ふっかけて持っていこうとする奴らだ何してきてもおかしくない。

それから、誰一人とて口を開くことなく1億5000万と言う大金を数え終わるまで待っていた。当たり前だが空気は最悪だ。


「確かに、1億5000万ありやした」

「そうか…………足りないな」

「は?」

「内訳は?」

「借金1億、利息5000万。そんで、遅延金が2500万だ」


 遅延金……!?そんな話1回も聞いた事ねぇぞ!?契約書も馬鹿みたいに読み込んだし、何度も確認した!

チラリとこちらを見る八雲さんに、オレは全力で首を横に振る。


「知らなそうですが?」

「それはおかしいなぁ?数日前に手紙を送ったはずだが?」

「知らないっすよそんなの!」


 どう考えてもそんな手紙届いてなかった!届いてたら真っ先にここに来るわ!


「あぁ?俺がそうだと言ってんだ!わかるか?そもそもここでは俺がルールだ!俺が絶対だ!それに逆らうってことはどうなるかわかんだろ?」

「っ!」

「大切なお友達傷つけたくないだろ?あぁ!?」


 だから来たくなかったんだよ……!こうやって横暴でめちゃくちゃな理論立てて、有り得ないのにそれが、まかり通るんだ!

どうしよう、どうすればいい!?絶対に払っちゃいけねぇお金なのは馬鹿でもわかる。でも、この人数相手にするのは少なくともオレには無理だ!


「どうした!払うのか!?払わねぇのか!?」

「あ、えっと」

「はぁ……」


 突然オレと男の会話を見てた八雲さんが顔を顰めてため息を吐いた。そしていつも浮かべていた笑顔を消した。


「アンタめちゃくちゃな事言ってるの理解出来てるか?そもそも利息は最大20%。この時点で訴えてもいいのに、俺は裁判を起こすのも時間をかけるのも嫌で払うって言ったんだ。なのに遅延金だと?そんなの契約書に書いてなかったし、存在が有り得ねぇんだよ」


 契約書見せたっけ!?いや、ハッタリだよな。この場においてめちゃくちゃなのはお互いだ。


「何だと……!?テメェ勘違いしてねぇか?さっきも言った通りルールだ。俺が!ここの!ルールなんだよ!!!」

「……素直に1億5000万で満足して契約満了にしてれば良かったのにな」

「あ!?なんだッアガ!!?」


 怒りで詰め寄った男が文字通り吹っ飛んだ。そして壁に激突して呻いている。

ーーいや、何が起きた!?


「さて、柊くん」

「あ、はい」


 椅子から立ち上がりながら、にこやかにこちらを見る。そして、


「自分の身は自分で守ってね」

「うぇ!?」


 最悪なことを至極楽しそうに告げた。


「ここからはルールも秩序も関係ない。勝者こそが全て。さぁ全員叩きのめそうか」


 結局こうなるのかよ!?



こんばんは!

次回更新予定日は日曜日の23時〜1時30分です!

1時までの更新無理な気がして来ました!すみません!

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