おわり
灰色の空。瓦礫の街。死の大地。かつては明るくて、賑やかなほど街には人々の声が溢れ、忙しそうに行き交う車達の姿があった。そんなどこか優しい雰囲気の街は、もうここにはない。
この街、いやこの世界は既に世界滅亡の可能性を孕むことを示す厄災級の魔獣。漆黒の邪竜に破壊され、世界人口は残り約15%まで減ったらしい。
私は、1人で街を歩く。整備されていた道だった場所を、僅かに形が残った建物を横目に見ながら、数少ない生存者を探して、物資を探して歩き続ける。
飼い犬だっただろう野犬はボロボロになりながら律儀に主の迎えを待っているのだろうか。まれに通り過ぎる人間を見つめては俯いている。
ここで、あの子を治療することで延命することが正解?餓死させるだけじゃないの?責任を持てるの?……私は、そんなことをしている場合?
目を閉じて考える。
「レイヒール」
ぽそりと呟けば、ふわりと暖かな風と淡い二つの小さな光がくるくると回り、犬を纏う。何処か不思議そうに光をきょろきょろと見回しこちらを見てくる。やがて光が収まれば、傷もなく、汚れもない凛々しい忠犬の姿がそこにあった。
私がそれを見届けて歩き出そうとした時。わん。と鳴き声が聞こえる。賢い子ね。そう思い敢えて振り向きはせずにその場から一歩歩き出した。
無責任。そう。その通り。だけど私には関係の無いこと。どうせ、誰が何をやったところで
ゴオォォォ……
世界が揺れた。何かの大きな雄叫びで。もう終わりは近いみたい。
空を見上げれば遠くに見える黒い影。飛び交う数多の光。
そこに居たのは一人の少女。真っ白な少女。その少女が美しい白竜に変わった瞬間
これは、いつかの世界。どこか遠いところで起こる記録──