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家賃62,000円/月の自宅→首都圏の職場:2020.6.20

このキーチロー(仮)を特定するためにどうすればいいか、今必死で考えている。

何せ、差出人欄も例の見慣れない文字なのだ。

どこからがドメインなのかすら、さっぱり分からない。

日付も変わってしまったので、とりあえず寝ることにした。

素面のはずだが、感傷的な気持ちが生んだ幻覚である可能性に賭けた、とも言える。

寝付けないので、缶チューハイを3本空けた。

気を失うように眠った代償に、明日の二日酔いがほぼ確定した。




日の出とともに目が覚めてしまった。もう頭が痛い。

身体もずっしりと重い。

よく考えたら、アドレスですらあの楔文字とはどういうことなのか。

英数字と記号以外のメールアドレスはあり得るのだろうか。

差出人はその状況で、そもそもどうやってメールを送ってきたのか。

二日酔いも相まって、イライラが収まらない。


白昼夢であることを少し期待しながら改めてメールを開いたが、特に幻覚などということはなく、しっかりと受信トレイに鎮座していた。

直線で構成された"キーチロー"の文字が腹立たしかった。



二日酔いも多少落ち着き、勤務先へと向かう。

休む覚悟はしたが、流石に「今日休みます」で休めるわけではない。

メールアドレスの件で確認したいこともあったので、ちょうど良かった。

ネットワークの仕組みに詳しい先輩にメールを見せてみたが、やはりありえない状況のようだ。

転送はそもそもボタンが見当たらず、PCでも一応見ることはできるが、印刷はできない。

PCスマホ共にスクリーンショットもできなかったし、先輩のスマホでメール画面を撮っても黒い画面しか映らなかった。


騒いでる私たちを迷惑そうに見ていた同僚のハッサン(エジプト出身)から、有力な情報を得た。

全く同じ模様もあるが、一つ一つが少しずつ違うものがほとんどなので、おそらく文章だと思う、とのこと。

確かに、よく見ると形が異なっている。

カタカナのキに見える文字は署名らしき場所以外にもあったが、言われてみればキーチローのキと違い、上と下の横線が同じ長さだ。

同じ形でも、跳ねの向きが異なる文字もある。

パッと見でよく分かるな、と驚いていたら、「手書きのアラビア文字に比べればね」と遠い目をしていた。

そういえば、この男のサインは何が書いてあるか全くわからないことを思い出した。

ハッサンにはお礼にコーヒーを奢った。


藤原主任に、7月に有給を使って連休を取ることを伝えた。

理由を聞かれたので、親の介護としておいた。

妙なメールで盛り上がっていたことは、とっくに藤原主任に伝わっていた。

どうせならとメールを見せ、掻い摘んで経緯を話した。

主任は相当興味を持ったようで、妻に見せたいと言い出した。

上司の奥様までいくと完全に見知らぬ人なので、丁重にお断り…「私の妻は翻訳の仕事をしていてね」しようとしたが気が変わった。

奥様は未知の言語に燃える性質、というか性癖らしい。


次の休みに、主任と主任の奥様と3人でカフェに行く事が決まった。

普段なら休みに会社の人間と会うなどまっぴらごめんだが、この場合はポリシーを曲げる価値があると判断した。

なにか手がかりが掴めればいいが。

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