第1話
続編に向けて連載としてまとめます。
私はとある屋敷に勤めるしがないメイド。
ある日私は見てしまったのです。
私が仕えるアリスお嬢様が魔法少女に変身するところを……。
ああ、地球の平和を守ろうとする凛々しいお姿、というかあのフリフリの衣装、尊い。
は! これはまさにシャッターチャンス!! 懐に一眼レフを忍ばせていた私に抜かりはありませんでした。
ところで何だか様子がおかしいですね。 見つからないようにしつつ、会話が聞こえる位置まで近づいてみましょう。
どうやらあの中年男性が悪の組織の幹部のようです。その隣にいるイカの怪人は彼の手下といったところでしょうか。
「ふははは、油断したな魔法少女。この触手は一度締め付けたものを絶対に離さないのだ」
「くそ、アリスを離せ」
「だめ、あなただけでも逃げて」
「そんなのだめだよ。ぼく達パートナーでしょ? パートナーは力を合わせなくちゃだめなんだ」
「うぜーな、引っ込んでろクソ妖精」
「うわぁ!!」
お嬢様を助けようとしたパートナー妖精さんが返り討ちにあってしまいました。
それにしても触手に締め付けられ喘ぐお嬢様、これもなかなか尊い。これもとりあえず撮影案件ですね。
と、連写している場合ではありませんでした。 そろそろお嬢様を助けなくてはなりません。何か打開できる策を考えなくては。
「ふははは、言っただろう。この触手は締め付けたものを絶対に離さないと。まあ、だがしかし、絶対という訳でもないがな。一つだけ例外があるのだ。なぜかこいつは光を浴びると怯んでしまうのだ。だが、こんな人気も無いような廃墟の中では、光なんて届く訳もなく、勝負あったな魔法少女。ふははは」
光? カメラのフラッシュでも大丈夫なんでしょうか? 試しに浴びせてみましょう。
パシャ
「ぐわぁあああ。ぎょおうわあおおええああ」
「どうしたイカ怪人!? 何、イカ怪人が背後からフラッシュを浴びているだと!? 何故だ、一体何が起こっているというんだ」
想像以上に苦しんでいますね。あの怪人さんよほど苦手だったんですね光が。
「ぐわぁあああ。ぎょおうわあおおええああ」
「何だかよくわからないけど触手が緩んだよ。今だ、アリス」
「任せて!!」
もしやこれは必殺技の流れ。 これは見逃せません。シャッターチャンス!!
「あら、あなたこんな所で何をしているの?」
後ろから聞き慣れた声。振り返るとメイド長が立っています。
「げ、メイド長!? どうしてここに?」
「それはこちらの台詞よ。まったく、帰りが遅いと思ったらこんな所で何をやっているの? 奥様が緊急婦人会を開催することになって忙しいんだから。ほら、早く来なさい」
「ああ~~ちょっと待って下さいーー! せめて、せめてバンクだけはーー!!」
引きずられながら連れ戻される私。
「ミラクルアリスビーム!!」
「くそう、イカ怪人がやられちまった。勝負は預けるぞ」
という声が遠くで聞こえるのでした。