05 テニスゲーム その3と推理ゲーム
☆05 テニスゲーム その3と推理ゲーム ☆
放課後、部室へ行くと既に詩羽先輩とマレイがいた。
二人にいつもの挨拶をして、部室に入る。
「こにゃにゃちは」
もう、この部活での挨拶は、『こにゃにゃちは』になったようなものだ。
「こにゃにゃちは」
「こにゃにゃちは」
やはり、この部活の挨拶は、『こにゃにゃちは』に決まったようだ。
二人は、僕が置いていったテニスゲームで遊んでいた。
「おー、遊んでくれているんですね! 先輩もマレイも!
僕は、トッテモウレシイデース!」
僕は外人のような口調で喜びを表現する。
「同じくらいの強さなら、結構面白いわね、空也君」
詩羽先輩が、このゲームを褒めてくれた。
「まあまあ、面白いじゃないの、昨日は負けちゃったけど、
すぐに追いついてやるんだから!」
マレイは、相変わらずの負けん気で頑張って遊んでいるようだ。
しばらくして、二人の対戦が終わった後、再度、復習として
テニスゲームのコツを教える事になった。
「昨日は、僕のテクニックを披露する機会がほとんどなかったけど、
レシーブ時も、ボタンを押してラケットを振り始めてから
パッドを押す長さでボールをコントロールできるんですよ」
「そうなの? やってみて!」
詩羽先輩が促がす。
「それじゃあ、サーブを打ってください。
ボールが飛んでくるコースに前もって入って、
ラケットを早めに振り始めます。
そしたら、パッドをボールを動かしたい方向へ長く押すほど
その方向へボールが飛んで行きます」
ボールが飛んできた。
そのボールを、僕の操るキャラのメシチーズで打ち返す。
ボールは、ストレートでコートのちょうどスミに落ちた。
「すごーい!」
パチパチと拍手する詩羽先輩と、マレイ。
「前もってボールの飛んでくるコースに入る事は、こうやって
ボールを自在に操れるようになるので、足の速い選手はここでも
性能が活きてきます。だからこの一番足の速いメシチーズは、
実はかなり強いキャラというのが僕の持論です」
「へー」
「そうなんだあ」
それから、雑談を交えながら話が変わっていく。
「空也君は、苦手なゲームのジャンルはないの?」
詩羽先輩が聞いてくる。
「シューティングゲームが苦手です。
測った事はないんですけど、集中力が15分くらいしか
持たなくって……。 恐らくですけど、テレビっ子なのが
影響しているんじゃないかと思います」
「えっ、なんで?」
詩羽先輩が聞いてくる。
「テレビって15分ごとに宣伝が入るじゃないですか。
だから、15分で集中力が切れるんじゃないかと。
でも悪いことばかりじゃなくて、テレビやゲームばかり
見ているのに目が悪くないんですよ。
なぜなら、15分で集中力が切れて
ちゃんと画面を見れなくなっているんじゃないかな。
ははは」
「詩羽先輩、こいつ、飛んでもないポンコツ野郎じゃないですか?
ゲームで15分以上遊ぶってよくある事だと思うんだけど、
どうやって乗り切るの! 強いヤツが入ってきたと思ってたのに、
使えねー!!!」
マレイが酷い事を言っている。
「いや、自分でもポンコツだなーとは思うけど、仕方ないじゃん!
性格も多分影響しているとは思うけど」
そこへ、この部活へ入る事をすすめてくれたクラスメートが
様子をうかがいに部室を覗いてきた。
「よお、空也、部活は女の子に囲まれて楽しくやってるかい!」
「ああ、楽しくやってるよ! 紹介してくれてありがとな」
僕は、答える。
クラスメートは、マレイのそばに置いてあるゲームのパッケージを
見つけた。
「このゲームは、推理もののアドベンチャーゲーム!
ポートピアネタバレ事件じゃねえか!
遊んだ事ないけど、このパッケージのヤツが犯人だったりして!
ハハハ!」
マレイが答える。
「バカね! これは面白いって評判の推理ゲームなのよ。
犯人がパッケージに描かれているわけないでしょ!」
「そっかあ? まあ面白かったら教えてくれよ。
じゃあな。 空也!」
「ああ、じゃあな」
僕は、クラスメートを見送った。
※その夜、家に帰って推理ゲームを遊んだマレイは、
そのバカと言っていた事が当たっていて、
そのゲームが嫌いになってしまい、
某巨大掲示板で、事あるごとに、思いついては
全然関係ないスレッドであっても、
このゲームの犯人の名前を
「犯人は○○!」
と書き込んで、それが流行り、有名なワードの一つとなった。
ネタバレは、トラウマになって、
社会の文化となって広がるんだなあ。
ネタバレは、モラル的にもクリエイターの利益にもよくないのでやめましょう。