03 テニスゲーム その1
☆03 テニスゲーム その1 ☆
放課後、部室へ行くと既に詩羽先輩とマレイがいた。
二人に挨拶をして、部室に入る。
「こにゃにゃちは」
こんにちは、とも、こんばんは、とも言いずらい微妙な時間帯の時に
挨拶する時に便利な、どこかの漫画家が開発した挨拶だ。
「こにゃにゃちは」
「こにゃにゃちは」
誰もつっこんでくれなく、そのままボケで返してきた。
ゲームを熱心に遊んでいて返事が面倒臭いのかもしれない。
「あのー、今日は家から、自分で買ったゲームを持ってきたんですけど」
「何のゲーム?」
先輩が聞いてくる。
「家族スタジアムと同じメーカーが作ったテニスゲームで、
家族テニスって言うゲームなんですけど」
「ああ、それね、一部では評判いいけど、慣れるまで超難しいって
評判のゲームよね」
マレイが答える。
「そうだけど、今日はこれで遊ばない?
コツを教えてもいいからさ」
「へー自信あるんだー、じゃあハンデをつけて勝負しましょう」
マレイは、また勝負がしたいらしい。
この前の野球ゲームで負けた事を根にもっているのだろうか。
とりあえず、ゲームカセットをゲーム機に刺し込み、
ゲームを始める。
「どのキャラクターを選んでもいいけど、最初は女子選手を選んだ方が
無難だと思う。 大きい当たり判定のデカラケットになっているから。
AボタンとBボタンそれぞれに違う球種で返すようになっていて
基本的にAが強打でBが軽い返しだったりロブだったり。
フォアで打つかバックハンドで打つかで球種も変わる」
長く説明しすぎたけど、ついてきているだろうか、二人を見る。
「へー、なかなか凝ったシステムなのね」
先輩はついてきている。
「それくらい知っているわよ。 前に少しだけやった事あるんだから」
マレイは、本当に知っていたのかわからないが、大丈夫そうだ。
「それだけじゃなくて、実はわかりにくい機能なんだけど、
パッドを押した長さで打つ方向を決められるんだけど、
これがかなり融通が効くせいで操作が難しくなって
すぐに曲げた方向へ行き過ぎたりするんだ」
「そのせいで難しかったのね。 今度は楽勝でマスターできそう。
それじゃ、さっそく、サーブから打ってみるわね」
「えい!」
マレイの打ったサーブは空振りだった。
「なかなか難しいわね……」
「ダブルフォルトにならないためには、Bボタンで弱めのサーブに
すると入りやすいよ」
「わかったわ。Bボタンね!」
「えい!」
パシュ!
サーブは無事に相手のコートに入って点数が入った。
「練習していてもつまらないし、やっぱりハンデつけて対戦しましょ!」
マレイは、やはり対戦がしたいらしい。
ろくにサーブが入らない相手だし、ボールコントロールも
できないだろうし、ハンデはどのくらいがいいだろうか。
マレイから先にハンデの方法を言ってきた。
「空也は、一番弱いキャラ使いなさいよ! このマツオカゾウってのが
そうなんでしょ」
「そうだけど、それだと、僕が自分のテクニックが十分に活かせなくて
つまらないから、目隠しして遊ぶから、どのキャラを使ってもいいっての
はどうだろう?」
「あんたアタシをなめてんの! 目隠しして勝てるわけないじゃない。
いいわ! それで勝負を受けてやろうじゃないの。 負けたらどうして
くれようかしら」
そこで詩羽先輩から提案が出た。
「負けたら、部室の掃除をしてもらうってのはどうかしら?」
「はい、僕はそれでいいです」
「私は、それだけじゃつまらないから、
セクハラ1回してもいいってのはどう?」
「ええ、そんなっ、どんなセクハラでもいいのか?」
「なによ! その絶対に勝てるって自信は? ハラタツー!!
モラル的に問題な事はダメに決まってんでしょ。 軽いやつよ!」
「なんだ、そっかー、そうだよねー」
「ムッキー!! ハラタツー、その絶対的な自信を打ち砕いてやるー!」
そんなこんなでテニスゲームでの勝負が始まる。
つづく。