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02 野球ゲーム


 ☆02 野球ゲーム ☆

 

 放課後、部室へ行くと既に先輩と部員がいた。

 

 先輩意外の部員も女子だった。

 

 茶髪を頭の上で2つにまとめている。

俗に言うツインテールというヤツか。


 こちらに気付くと立ち上がって近づいてくる。

 

「君が、新しい入部希望者の男子ね!

私の名前は、内田マレイ。

私にゲームで勝てないようだと入部は認めないわ!」


 何の権限があって入部を認めないのか、よくわからないが

勝たないと入部できないのだろうか。


「勝たないと入部できないの?」


 一応、聞いてみる。

 

「あまり下手な人に入部されて人数が増えすぎても困るのよ」


 なんだか、オカシナ理論だ。

先輩にも聞いてみる。


「先輩、本当にそうなんですか?」


「えっ、いえ、そんな事はないわよ。

ただ女子ばかりの部活に男子が来たものだから、

なんだかんだ言って追い返したいんじゃないかしら?」


 ちらっと、マレイの方を見る。


「そうよ、女だけの部活に男子が入ってきたから

追い返そうと思っただけよ。

君も幽霊部員が多いとはいえ、よく女子だけの

部活に入ろうと思ったわね!」


 マジか!

クラスメートに騙されたのだろうか。

 

「知らなかった。

でも見たところ実質、部員二人しかいないんじゃ?

なら、入ってもいいかも」


「くっ、しかたがないわね。

入部してもいいけど、勝負よ。

辞めたくなるくらいコテンパンにしてあげるわ!」


 僕達は、ゲームで勝負をする事になった。

 

 対戦するゲームは、超有名な野球ゲームで、

家族スタジアム、略してファミスタと呼ばれている。


「まずは、チームの選択ね!

私はホエールズを使うから、君は別のチームを選んで、

どのチームでもいいわ」


 僕はあまり野球に詳しくない。

このゲームをそんなにやりこんではいない。

勝つためにどのチームを選ぼうか?


「僕は、ナメコスターズを選ぶよ」


 僕は、このゲームを作った会社のゲームキャラが

選手となっているチームを選んだ。

このチームの強みは、ピノッキという選手で一番足の速いキャラがいる。


「へえ、それはなかなかツウな選択ね。

ピノッキで点数を稼いで取られる点数を抑えて勝つという戦略かしら。

私の選んだチームは、選手を代えれば1番から7番まで

足の速い選手で埋められるのよ。点数を抑える事ができるといいわね」


 僕達はゲームを始める。

 

 マレイは、ホエールズの応援ハッピと帽子をかぶりテンションを

上げて試合にのぞむようだ。


 応援歌らしいものまで歌いだした。

 

「カットバセー! ヤ・チ・キ!

私のバットを振るのを途中で止めて、ボールを転がすテクニックを

見せてあげるわ!」


 ふーん、転がす気まんまんなんだね。

 それじゃあ。

 

 僕は、ボールを投げてバットに当たる直前で

バットの芯に当たるよう内側にボールを動かす。


 ボールは、ピッチャーライナーでアウトだ。

 

「あれー? おかしいな。 まあ、失敗する事もあるわよね……」


 僕は、同じような調子で3者凡退に打ち取る。

 

「そんな、私のスーパーカートリオが3者凡退なんて……」


 今度は、僕の攻撃だ。

 

 打者はピノッキだ。

 

 マレイがやろうとしていたように、僕もボールを転がす。

なんなく内安打で塁に出る。


 そのまま2塁まで盗塁だ。

マレイもピノの足の速さに諦めているのか、あっさり進塁を許している。


 僕は、3塁までピノを送り。

外野フライの犠牲打でピノをタッチアップさせ1点を取った。


「君、やるわね。 だけどその小さな点数を守れるかしら」


 僕の攻撃回が終わり、またマレイの攻撃だ。

打者は、4番ポンチョだ。結構打力の高いキャラだ。


「フフフ フフン、フフフ フフン」


 マレイは鼻歌をしている。

今度は、応援歌の鼻歌だろうか、打つ気まんまんだ。


 僕は外角にストライクになりそうでならない逃げるシュートを投げる。


 ブン!

やはり振ってきた。


 2球目も同じ球種を投げる。

 

 ブン!

振ってきた。危ない……。ストライクを投げるところだった。


 3球目は、内角にデッドボールにならないぎりぎりのボールを投げる。

 

 ブン!

振ってきた。ふぅ、なんとかアウトが取れた。


 マレイは、その後も、足の速い選手になると相変わらず

ボールを転がそうと必死になっている。僕は余裕でアウトを取れた。

 

 僕の攻撃は、ピノッキ以外の打席だと三振ばかりでほとんど塁に出れなかったが、

2対0で完封し勝つ事ができた。


「そんな、私のマシンガン打線が0点で完封負けだなんて……」


「ふぅ、なんとか勝つ事ができたよ。 これで入部してもかまないよね」


「ぬぐぐっ……」


 詩羽先輩が、この試合の反省会をうながす。

 

「空也君は、どうしてマレイを完封できたのか、

良かったら説明してあげて!

空也君は、選球眼に難があるみたいね。

3振の数が多すぎる」


 見抜かれている。

僕は、反射神経は普通だと思うけど、

条件によって行動を分けるのは苦手なんだよなあ。


「そうよ。なぜ私のボール転がしテクニックが効かなかったのか。

教えなさいよ!」


 マレイは、こっちを睨んで聞いてきた。

 

「どうしようかなあ。 肩でも揉んでくれたら教えようかなあ」


 チラッと僕はマレイを見る。


 マレイは、仕方なさそうに僕の後ろにまわると

肩を揉んできた。


 揉んでくれるとは思ってなかったけど、案外簡単に

やってくれるなら言ってみるもんだ。


「早く教えなさいよ!」


「ああ、あれは、転がす気まんまんだったから、

バットに当たる直前でバットの芯に当てさせてたんだ」


「なんだとっ! そんなずるい手を使ってたのか!」


 マレイは、僕の首に腕を回すと片方の腕を立てて

肘を肩に置き、チョークスリーパーをしてきた。

マレイの胸が僕の背中に当たる。


「くっ、苦しい!」


 僕は、苦しくなって腕を3回叩きタップする。


 詩羽先輩が心配そうに口にする。


「うちの部は、ファミスタ弱そうねえ、大会で

競技に選ばれたら弱点になるかもしれないわねぇ……」


 ゲームの上手い天性の素質を持つ人たちは、

60分の1秒を目押しできたり、ファミスタだと必ず

ヒットにできるような選球眼やタイミングを取れる

化物がいるらしい。


 それでも、僕達常人は、知恵と工夫で

自分の持てる能力を最大限に使い、ゲームの腕を磨いていく。

それがeスポーツなのかもしれないと僕は思った。


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