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スズメ 2回目

金田一

「さて次は誰かな?」


司会

「次はまたしてもスズメですね。なんか会場内が賑やかになってきましたよ。それでは雀さんどうぞ」


「必勝」と書いたハチマキを巻いたスズメたちが会場内に入ってきてにわかに騒がしくなった。


スズメ

「まいど」


司会

「また今日もたくさんの数が入ってきましたね」


スズメ

「せや、ワイらは常に集団で行動してまんねん」


司会

「そうですか。今日は何を提訴されますか?」


スズメ

「やっぱ『スズメの涙』でんなー」


司会

「あ、少ないことのたとえですよね。『今年のボーナスはスズメの涙ほどしかなかった』みたいに使いますね」


スズメ

「そうでんねん。しやーけどそれはあまりに失礼やおまへんか?」


司会

「でも、実際にスズメさんの涙ってほんの少しじゃないですか?」


スズメ

「せや、一羽やったらな」


司会

「は?」


スズメ

「ワイらは前にも言うたように常に集団で行動する鳥なんやで。まあ、これ見てんか」

一枚の紙を司会に手渡すスズメ。


司会

「何ですか?」


スズメ

「現在の日本のスズメの個体数や」


司会が読み上げる。

「日本本土のスズメの成鳥個体数は数千万羽と考えるのが妥当と思われる。この数千万羽は成鳥個体数の推定値なので、孵化期の秋冬にはこの数倍になると思われる。えー、凄い数ですね」


スズメ

「せや、約日本人の人口ほどおるんやで。それが全部一ヶ所に集まって一斉に泣いたらどうなると思いまっか?」


司会

「大豪雨ですね!大変です、金田一先生。助けてください」


金田一

「スズメの『スズ』は、小さいことを表す『ササ(最小)』が転じたものだと言われています。一方、スズメの『メ』は『群れる』という意味です。つまりスズメは、名前からして『小さい群れる鳥』であるといえます」


スズメ

「せや、金田一はんさすがでんな。もし一億羽が群れて一羽で1cc泣いたとしたらどないなりまっか?」


司会

「ちょっと待ってください。電卓電卓と・・・えー、100トンになります」


金田一

「100トンの雨が一ヶ所に集中して降ったら大変なことになりますね」


スズメ

「せや、例えば東京駅や軍事基地の上で一斉に泣いただけでかなりの被害がでまっせ。また泣いたあとは必ず糞もしますさかいに、こら覚悟がいりまんな」


司会

「まるで生物兵器ですね。それでは今日の提訴内容は意味の変更ですか?」


スズメ

「せや!ショボい意味やのうて、もっとグレートな力強い意味にしてんか!」


金田一

「それではこうしましょう。『リーサルウェポン・スズメの涙』ではいかがでしょうか?」


スズメ

「よろしいでんな、それ!最終兵器でんな」


司会

「これはグレートですね。いかがでしょうか?」


スズメ

「決まりやな!ほな今日は気持ちよう帰らせてもらいま。おおきに!」

「勝訴」と書いた旗を先頭にスズメの大群が去って行った。


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