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金田一

「さて、次の方」


司会

「次は龍ですね。それでは龍さんどうぞ」


「今日はよろしくお願いします」


司会

「さすがは龍さんですね。巨大でかつ貫禄があります。入ってきた途端に会場内はまたもやしんと静まりかえっています」


「そう言わず、お互いざっくばらんにやりましょう」


司会

「お気遣いありがとうございます。さて龍さんの登場することわざは沢山ありますが、今日はどのことわざを提訴されますか?」


「やはり『龍に翼を与える』ですね」


司会

「一般には『すでに強い龍に空を飛べる翼をつけることによって、さらに最強になる』ということですね」


「はい、最強は結構なんですが、なんか人間は私たちのことを勘違いしていませんか?」


司会

「勘違い・・・と言いますと?」


「わかりませんか?われわれは翼無しでも、すでに空を飛べるんですよ。『漫画 日本昔話』のオープニングの部分を思い出して欲しいのですが」


司会

「確かに・・・『坊やー、よい子だ。ねんねしなー♫』の部分で太鼓持った子供が龍に乗って空を舞っていますよね」


「でしょう?だから我々に翼は最初から必要ないんですよ。理由は今の状態で既に飛べますから。というか、そもそも空は我々の昔からのすみかですからね」


司会

「え、いつも空に住んでいるのですか?」


「はい、昔は上空10000mあたりが住みかだったのですが最近では航空機の安定高度になったので安全の為に住民票を20000mのところに移しました」


司会

「あ、我々の航空機の運航の邪魔にならないように気を配っていただいたのですか?」


「はい、昔は時々寝ている私たちに航空機が接触する事故がありましたからね。だから私たちの引越し後は航空機の事故が急に減りましたよね?」


司会

「全然知りませんでした、ご配慮ありがとうございます。という事は既に『飛ぶことができる』龍さんの今日の提訴内容はことわざそのものの破棄でしょうか?」


「いや違います。大幅の意味の変更と少しこのことわざに絡めて今の日本人に忠告したいことがあるだけです」


司会

「わかりました。では金田一先生よろしくお願いします」


金田一

「要するに龍さんの主張は『龍に翼を与える』はオーバースペックということですよね」


「そうです。私は、仕事柄よく東南アジアとか海外に行くんですが、家電などの日本製品は最近は全然売れていませんね。むしろ後発の韓国や中国製品の方が条件を満たしてなおかつ値段が安いので売れているのが現状です」


司会

「そうですね。昔はパナソニックやソニーが海外では有名でしたが今ではサムソンやLGに取って代わられましたね」


金田一

「確かに日本製品は性能は良いけれどもオーバースペックのために値段が高くなってしまって競争力がなくなり、その結果売れなくなってますよね。残念です」


「はい、ここから先は日本人への忠告ですが、昔から日本人は『凝り性』のタイプが多いので市場が求める以上の性能のものを作りたがる傾向があります。戦時中の戦艦大和や酸素魚雷などが良い例です」


金田一

「はい、口径が46cmの主砲や航続距離が40kmの魚雷は完全に必要以上の性能でした。また戦後も全ての家電製品や携帯電話の性能が突出し過ぎて諸外国のニーズから乖離してガラパゴス化しています」


司会

「私なんかはビデオやテレビなどのリモコンの操作が難しいのでサッパリわかりません。ましてやスマホなんかも多分、全性能の1割以下しか使っていませんね」


「でしょう?オーバースペックの成れの果てですね。これはもう本末転倒です」


金田一

「わかりました。龍さん、明日からは『龍に翼を与える』は『不必要な装備をつけた日本製品はかえって売れない』ことを表す厳しい例えではいかがでしょうか?」


「私的にはあまりいい意味にならないですが将来の日本人の『モノ作り』に対する忠告になるなら是としましょう」


司会

「龍さんは他にもいいことわざが沢山ありますから1つくらい悪い意味になってもいいということですね。このあたり流石に余裕ですね」


「これで日本民族に指導ができて、かつ自信を持ってもらえたら安いモノです」


司会

「それでは明日から施行します。ありがとうございました」


「はい、また100年後に会いましょう。それまで精進していい製品を作ってください」





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