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金田一

「はい、お次は誰かな?」


司会

「はい、あれ?犬ですね。人間とは古くからのよきパートナーの犬さんとは折り合いがついているはずですが何が不満なんでしょうね。では犬さんお入り下さい」


「こんにちは。今日は主従の関係を超えて、いや主従だからこそ敢えて言わせてください」


司会

「あ、犬さん。100年に一度の見直しなんで主従とかは考えないで忌憚の無い意見をどうぞ仰ってください。一体どのことわざが気に入らないんですか?」


「はい、ズバリ『犬死に』です」


司会

「一般には『意味のない死に方、無駄な死に方』を指しますね」


「そうなんです。これだけ長年人類に忠誠心を持って仕えてきた我々に対してあまりにも愛が感じられない言葉だと思いませんか?」


司会

「たしかに、犬さんの死がなんで無駄な死に方の代表に選ばれたんでしょうね。提訴内容は何ですか?」


「ここ100年で我々犬を含むペット事情が激変したのはご存知だと思います」


司会

「そうですね。たしかに家族の一員として大切に扱っている家庭も多いですね」


「はい、最近では『ペット葬』と言って私どもをありがたいことに懇ろに弔っていただきお墓まで立派なものを立てる家庭もあります。一説によるとこの『ペット葬』のマーケット規模は向こう30年で5兆円の需要があるとか」


司会

「あ、それわかります。私のお隣の家庭の奥さんは旦那さんより犬を大事にしていて愛犬が死んだ時は号泣していましたから」


「わかりますか?この100年間で確実に我々犬の死というものの格上げが行われていたのです。しかし実際には戦争映画などでは『犬死にだけはするなよ』なんて平気に『無駄死に』の意味で使われています」


司会

「ということは犬さんの提訴はことわざそのものの抹消を希望ですか?」


「いえ、『犬死に』ということわざの意味にもっと愛が欲しいのです」


司会

「わかりました、それでは金田一先生よろしくお願いします」


金田一

「要するに今回のテーマは『愛』ですね。たしかにこの100年で犬さんの地位は飛躍的に上がりました。しかし江戸時代なんかはどこの名前もわからないような犬は死んだら川に流して『はい、おしまい』の文化だったんです」


「それは酷いですね」


金田一

「いや、鎌倉時代なんかはもっと残酷で犬は『犬追物』という武士の弓競技の標的にされたこともあり犬の死に対しての尊厳などかけらも無い時代でした」


「そう考えてみると我々がいる今の御時世は夢のようです」


金田一

「では、こうしましょう。提訴を受けいれ『犬死に』ということわざは据え置き、意味をうんと格上げして『家長である旦那さんの死よりも悲しい死』ではいかがでしょうか?」


「あ、それなら他の犬たちもきっと納得すると思いますが旦那さん連中からクレームは来ませんか?」


金田一

「あ、来ませんね。これは事実ですから。きっと本人たちも自覚しています」


司会

「犬さん、よかったですね」


「はい、本当にありがとうございます」

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