昴
私は今日、高校に行く。学校に行くのは中学校の卒業式ぶりではあるが、小学校のころから学校を休んでばかりだったので、こんなにもいい気分で学校に行くのは今日が初めてなのだ。
私は入学式が始まるまで、昴を探そうと思った。私の知っている人は昴しかいなかったからすることもなかった。私は学校なんていったことがないから、普通の人は入学式の日に人に話しかけて友達を作るなんてまず私はしらない。ちょっと探すと昴はいた。遠くではあったけど昴の影を見つけた気がしてその場所まで走った。私はほとんど毎日病院にいたから運動なんてほとんどしたことがなかった。私は歩くのができるくらいの体力と脚力しかないのに私は走った。昴の近くまで行くと私は息を切らしながら昴に声をかけた。
「昴、私もこの学校に入ったんだよ。」
昴はどんな反応をするんだろう。ビックリするかな、喜んでくれるかな。そんな期待をしながら昴が何か言うのを待っていた。だけど、昴は私のことを見もしなかった。私は待ちきれなくなって昴の肩をたたいた。
「昴、ちょっときいてる?」
「えっ、何ですか?」
そうして私の方を向いたその人は昴じゃなかった。私が昴だと思って話しかけていた人は昴じゃない他の誰かだった。私はその瞬間にクラっとして、その場所に倒れた。さっきまで私が昴だと思って話しかけた人が私に何かを言っている。
「ちょっと大丈夫?おい、誰か先生呼んでき…」
私が起きたその場所はいつもの病院の天井によく似ていた。どうやら学校の保健室に私はいるらしい。私はどうしたんだろう。そうだ、昴。昴を私は見つけられなかった。私は勢いよくベッドから起きた。その音を聞いて保健室の先生らしい人が私のそばに来た。この先生は私がずっと入院していたことを知っているらしい。どうしてかと私が聞くとこの学校の先生はみんな私のことを知っているらしい。私の事情を知らないといろいろと不便だからということらしいが、何だか私のことをほとんど知られているからなんだか恥ずかしい。続けて先生はいろいろと話してくれた。
先生の名前が美沙であるということ。私をここまで運んできてくれた人はやっぱり私が昴と間違えた人で、名前は須山豪というらしい。でも、そんな中でも一番驚いたのは昴が事故にあったということ。今日の朝、昴は学校に来る途中に居眠りをして、信号無視をした車に轢かれたらしい。幸い、命に別状はないらしいが、私が元気になったのに今度は昴が入院することになるなんて思ってもみなかった。その日私は学校を早退した。私自身が具合が悪かったというのはあったけど、昴のところに行きたかった。私は先生に昴が入院している病院をきいてその病院へ向かった。皮肉にも昴が入院している病院は私がいつも行っている病院だった。
私が病院へ着くと、昴の両親と私のお母さんがいた。昴の両親は顔がくしゃくしゃだったけど、無理をして決っして笑顔とはいいがたい顔で私に高校入学おめでとうと言ってくれた。その顔は今にも泣きだしそうなとても悲しい顔だった。そんな昴の両親の後ろに昴はいた。昴にはいろんな管がつながれていた。このまま昴が目を覚まさなかったらどうしよう、そんな気持ちでいっぱいだった。
この日はお母さんと一緒に家に帰った。今日のご飯はおいしく感じなかった。お風呂に入ってすぐに寝ようと思って布団に入ったけど、全然寝ることができなかった。
次の日、私はとても寝起きが悪かった。でも、昴の分まで学校で頑張って、そして楽しまないといけないと思い、学校に行く準備をした。
私が一階に降りるとお母さんは朝ご飯を用意してくれていた。私もお母さんもあまり話さなかったけど、お母さんは私に言った。
「あんまり頑張りすぎないでね」
「分かってるよ」
お母さんはやっぱり私のことをよくわかっている。私が無理をしていることも、しようとしていることも。
私は学校へ行った。クラスメートの人達はもう自分たちの場所が決まっている人が多いらしく、私に話しかけてくる人たちはいなかった。