異世界転生が増えるワケ
昨日投稿した結果を見てみる。
ブクマ、増えてない。
PV、増えてない。
感想、無し。
やっぱり俺には無理なのか?
俺は小説を書いては投稿サイトに上げている。小説家になりたくて。
正確には今の仕事を辞めたくて。
小説で当てて一攫千金、小説家で暮らしてく。そしたらもうこんな仕事は辞めてやる。
甘いこと考えてんなあ、と自分でも思う。
でも今の仕事を続けたく無い。仕事を辞めたい。今の仕事を辞めて転職しようにも、今のご時世、俺を雇ってくれるとこも無いだろう。
だけど個人で稼いで食っていける仕事なんてのは、俺には小説家かマンガ家くらいしか思いつかない。
なのでこうして小説を書いては投稿している。
ここで人の目について評判になれば出版社から書籍化、とか。
これで人気が出るなら、俺にも小説家でやっていけるかも、という判断もできる。
で、やってみたら、これが全然人気が無い。受けない。やっぱり俺が書くものなんて、おもしろくないのかー。
俺の妄想、俺の願望、それを文章にして綴ってみてもそれを見ておもしろいという人はいないのか。
主人公が異世界に転生して、転生前の知識を活かして稲作を発展させて、米作りで皆を幸せにする物語。
俺の個人的な妄想の垂れ流し。今の仕事への恨み言。不満と愚痴が形を変えたもの。
これを楽しんでくれる人はいないのか。
そりゃそうか、とも思う。
俺が使ってる小説投稿サイトで他の人達の書いたものをぼんやり見る。
エッセイのところでタイトルが気になったものを見ると。
それには、今の時代、小説家ではやってはいけない。安定した仕事を持ち副業で小説家をした方がいい。
というようなことが書かれていた。
まぁ、その通りなんだろうな。それが世の中ってもんなんだろうな。
では、今日も安定した収入の為に働きますかね。
移動して倉庫まで。倉庫には米を袋に入れて保管している。倉庫に入り込んだ虫や鳥から米を守る仕事。
通販で買ったガスマスクを被って倉庫の中へ。
古い倉庫は明かりをつけても薄暗い。
倉庫の中を1週して、落ちてるネズミの死体に虫の死骸をホウキとチリトリで集めてゴミ袋に。
そしていつものお薬、クロルピクリン。
揮発が早いのでこれを使うためにガスマスクを買った。匂いがキツいんだこれ。
この倉庫は近くに住んでる人がいないから匂いが酷くても使えるんだけど。
古着のシャツとか穴の開いた靴下に染み込ませてポイポイと。
倉庫の中にテキトーにばらまく。
こうやって燻蒸しないと虫がわくしネズミにやられる。虫がわいたら売れやしない。買った米に小さな虫が1匹でもいたら、文句を言われる。
虫がいるほうが、虫も食わない米より安全だと思うんだがなぁ。
週に1回、こうして倉庫の燻蒸をする。新米ができるまでの1年間、毎週かかさずに。
保冷倉庫があればいいんだけど、そんな倉庫を建てる金は無い。
なので米を守るためには週に1回これをしないといけない。
クロルピクリンなら1リットル千五百円。判子があればホームセンターで誰でも買える。
科学兵器禁止法では第2種指定物質で、扱いとしては科学兵器なんだけど、これが簡単に買える日本ってなんなんだろな。
つまりそれだけ強力な殺虫剤なんだ。
倉庫に入り込んできたカラス、ネズミ、ネコ、スズメ、ゴキブリ、コクゾウムシ、なんでも殺せる。
これだけ強力でも農林水産省は農作物には残留しないって言ってるから、どれだけたっぷりと使っても大丈夫。
残留基準だって作られてない。
でもこの米を買う人は、この薬を使ってることを知らないのかも知れない。
倉庫の保管中に農薬を使ったってことにすると、米が有機栽培米として売れない。
有機栽培米として売るには、農薬と化学肥料を使うワケにはいかないので、たとえ使ってても、使って無いことにする。
農薬を使った米を有機栽培米として売る業者はゴロゴロいる。
週に1回燻蒸してたら米に残留してるんじゃないかな。クロルピクリンで米の変色はないから解らない。
こんな米をお金出して買って食べる人の気がしれない。
だけど日本は昔から、米と酒は混ぜて売るのが常識で、こんなことはみんな知ってることだろうけれど。
米の偽装はあって当然、無いのが不自然が当たり前の世界。
これが日本の常識で、そこに不満を感じる俺の方がおかしいんだろうけどさ。
他にもクズ米、被爆米、線路米、カドミ米、いろんな米が混ぜられてる。そして売られている。
みんなそんな米を買って食べている。
日本でガン患者が増えてる原因て、もしかしてこれなんじゃないのか?
一通り終わらせて外に出て倉庫の扉を閉める。
ガスマスクを脱いで、一服しようとタバコをくわえて火をつける。
ああ、
「俺も異世界に生まれ変わって、まともな米作りしたいなぁ」
タバコの煙と一緒に呟いて吐き出す。
それは日本ではもうできないことだから。
他の世界にでも生まれ変わらなければできないことだから。