素直で純粋な奴。
素直で純粋で騙されやすい馬鹿な奴。
いやいや、そんな奴いないだろ。って思ったお前。覚えとけ、いるんだよそんな馬鹿が。
「今日雨降るらしいから、傘もっていった方がいいぞ」
そんな嘘を八つ当たりでいってしまったら、
「え、そうなの?長い傘持っていかなきゃ」
とか律儀に傘をもっていって、
「今日雨降らなかったよー」
って言ってにへらって笑う、そんな奴。言ったのは自分だけど、罪悪感が半端じゃない。むしろ罪悪感しかない。
そこまで信じられてしまったら、騙してやったぜって感覚より嘘をついてしまったという後悔ばかりが体のなかでぐるぐる回るんだ。
でも奴は騙されただなんて思っていないから、謝ろうにもそれを言葉にすることができない。
ごめん。
そんな子供でも言えることばを俺はいつでも喉の奥に詰まらせているんだ。そして、そんなときは決まって苦い顔をしているらしく、
「どうしたの、なんか変な顔してるよ?」
心配そうに奴も顔を歪めるんだ。
「なんでもない」
素直になれない俺はいつもこればかり。
きっと誤魔化せてなんかいないだろうけど、他に言葉を繕うこともできない。情けないのは知っている、だからそこには触れないでくれ。
「なん...でもないなら......いい、けどさ」
浮かない顔をして言われる言葉に、俺は今日もやるせなさを感じるんだ。