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第15話 バンジーベーカリー(その1)

官吏養成学校に入学すると決めたハヤトであったが、冒険者ギルドを出たあと、何も準備してなかったことに気づいた。

「制服や寄宿舎は学校が用意してくれるだろうけど、それ以外の準備は必要だろうな」


とりあえず同じ学校に行くというアリスに聞いてみようと話しかけた。


「えっと、学校に入る準備って何が必要なの」


「えっ、そうかハヤトさんはここには何も持ってきてないからゼロからの準備なんですよね。ちょっとお父さんに聞いてみますね」


少し前を歩いていたバンジーさんがアリスに呼ばれ来てくれた。


「ノヴァルディーで悪目立ちをしないような服装、あと冒険者ギルド会員になったのだから町の外に出ても対処できる程度の武器。それ以外にも必要なのあるだろう。そういえば今夜はどこに泊まるんだい」


「あっ、どこか宿泊施設紹介していただ・・・「いや、服装の方が先だな。先なのだが夕方過ぎてるから」


あたりはすっかり日が落ち、町の僅かな街灯と家々から漏れ出る光で視界を確保してる状況で、開いている店も限られてる。勿論こんな時間に衣料品店は開いていなかった。


「とりあえず今夜はうちに泊まりなさい。空いている部屋もあるから」

「お言葉に甘えます」


バンジーさんのご厚意に甘えることになり、バンジーさんの店に向かった。



『バンジーベーカリー』

バンジーさん宅は店舗兼住宅である。夕方には店を閉めているので裏口から入った。


「母さん、ギルドから帰ってきたぞ。お客さんもいるから夕飯用意してくれ」

「はいはいすぐに出しますよ」

「お母さんただいま!」

「はじめまして、トライ人のハヤトです。1晩お世話になります」


挨拶も早々にリビングに通された。リビングと言ってもあるのは木製のテーブルと椅子、柱時計といったところだろうか、勿論地球なら当然あるであろうテレビは無い。


「お店の余り物がメインになっちゃうんだけど、お客さんが来るってもっと早く聞いてたら腕によりをかけたんだけどね」

「いえ、お気遣い無く」


「「「いただきます」」」


テーブルに並んでいるのは食パン、コッペパン、クロワッサン。それにチーズ、サラダにソーセージといった感じだった。


「家に来なさいと言っておきながら店の売れ残りとかが中心になって申し訳ないね」

「いえいえ、自分が来た地球で食べたパンやチーズと比べても味が濃厚で美味しいです」

「そう言ってくれるとパン職人冥利に尽きるよ」


バンジーさんは豪快に笑いながら、肩を叩いてきた。

「いえいえ・・・(い、痛いですよ)」


「そういえばハヤトさんが住んでたチキュウってとこにもパンは売ってたんだよね。ここにあるもの以外で何かある」


ハヤトはテーブルの上を見ながらふと考えた。

「こちらにピザトーストってありますか」

「トーストはわかるよ食パンとかを焼けばいいんだよね。ピザって何。お父さんは知ってるの」

「いや初耳だ。もし良ければ教えてくれないか」


「すいません、ちなみにケチャップってありますか」

「去年あたりにトライ人の方が開発されたってこれですね」


そこにはトマトの絵が貼ってある瓶詰めの中に赤いドロドロの液体があった。

話を聞くと、ケチャップ、マヨネーズ、ソース、味噌、醤油など各種調味料が去年からノヴァルディー全土に一気に広がった。複数の会社があるようでそのどれもが、日本でメジャーだった会社名を文字った会社名だった。


「それならピザトーストすぐに出来ます」

食パンにケチャップを塗り、ソーセージを薄切りにして載せ、玉ねぎやピーマンなども載せて、最後にチーズを削ってふりかける。


「バンジーさん。これを焼いてもらっていいですか」

「よっしゃ」


待つこと数分。

「これは見たことないぞ」

「この匂いが食欲をかきたてますね」

「美味しそうだよ」


「ハヤトさん、この味で合ってるか確認してみて」

奥さんに言われ、バンジーさんもアリスもうなづいたので試食した。


「こ、これですピザトースト」

ハヤトの言葉を受けて3人もかじりついた。


「「「美味しい」」」


そうするとバンジーさんが真面目な顔をしてハヤトに言った。

「これを明日からうちの店で販売していいか」

「いいですよ。地球では結構ポピュラーなものなので」

「有難い。バンジーベーカリーの新たな売れ筋商品になるのは間違いないよ。ただ、このピザトーストのレシピを無料(ただ)で教えてもらうのは気が引けるな」

「いえ、そんな事ないですよ」

「それはダメだ。これはどうだろう入学準備の諸々一式を私に用意させてくれ。それでも間違いなくこのレシピでバンジーベーカリーは儲かる」

「ダメです。そもそもピザトーストは日本人・・・いえ、トライ人なら普通に知っていますし、明日にでも王都で流行ってるパンって情報で流れてくるかもしれません。この程度の情報でそんなもの貰ったら、かえって恐縮してしまいます」


バンジーさんとハヤトの間に暫く沈黙が訪れる。

「そしたら、お父さんがハヤトさんの入学準備一式を揃えるお店を紹介して、あと入学して寄宿舎に入るまでウチで泊まってもらうってことでどうかな」


アリスの提案にバンジーさん、奥さん、ハヤトはうなづいた。

「決まりだな」



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