第10話 アリス
私、アリスはお父さんと狩猟に出掛けた。
狩猟だなんて言うと驚くかも知れないが、少年少女の大部分がお小遣い稼ぎの一環でやっている。友達にも川釣りをする娘もいるし、イノシシの罠を仕掛けて土日に回収にいく子もいる。
でも最近、魔力を持つ子の間で話題に上るのが『白猫マークの宅配便』だ。魔力と体力を持ってると“イレホーダイ”に入る容量は大きくなり土日だけの小遣い稼ぎでも、相当な稼ぎになるらしい。
友達たちの事はこれぐらいにして私の狩猟は弓が基本だ。一応女の子だから、接近戦は止めてくれとお父さんに3歳くらいから言われてて今では弓だけならサウザンドリーフで5本の指に入るって言われている。エッヘン!
今日は私が来月から学校に行くからそのお祝いの準備。学校に行ける年齢まで無事に育った事を神様に報告してこれからの無病息災を祈るパーティーの準備をしなくちゃ。
ちなみに私の家はパン屋なので、パンに挟む具材としても狩りの成果は使えるし、余りそうなら商業ギルトや冒険者ギルトなどで買い取って貰えば問題ない。ちなみにお母さんはお店で店番をして待ってる。お母さんも一緒に狩猟に来たがってたんだけど、さすがに派遣奴隷を雇う余裕は無いからね。
そんな時、狩猟をしていた私達の前方にこの辺りでは見かけないカラフルな服を着た人がキョロキョロと周囲を見渡していたのを見つけた。見た感じ武器らしいものは持っていないみたいだ。
私はピンときた。昨日、冒険者ギルドの食堂にパンを納品に行ったとき、ギルドの掲示板にいつもの依頼の紙より大きく目立つ感じで『トライ人保護協力依頼』と書かれてあった。
異世界駐在外務大臣のカイト伯爵からノヴァルディー本国に連絡があって、ここ数日以内に異世界より新たなトライ人を送るので、各地のギルドで安全を確保しトライ人の能力が発揮出来るようにして欲しいというものだった。
「お父さん、もしあの人がトライ人で安全にギルドまで連れてきたら1万カンくれるってあったよ」
「なに!1万カンといったらうちの半年分の生活費じゃないか」
「私にもおすそ分けで1千カンくらい欲しいな。入学祝いも兼ねて」
「う~ん。そこらへんはお母さんと話してからだな。ともかくあの人の所に行くぞ。町長が言ってた服装の特徴とも一致するし、保護にむかうぞ」
「はい。お父さん」
気がつくと隼人のすぐそばに2人の人が近づいてきた。
あごヒゲが特等的なマッチョな感じの男性1人だったら間違いなく盗賊だと思い逃げたはずだが、その横にはもう1人女の子がいた。見た感じ先程自分の姿と同学年みたいだ。
話してる内容が少しだけ聞こえたが、どうも親子の様だ。まあ、親子で盗賊やってたらお手上げだが、その子からはそんな印象は受けないので、気持ち警戒は持ちつつも2人が近づくのをただ待っていた。
「えっと、貴方はトライ人ですか?」
「トライ人ってなんですか。初めて聞く言葉なんですが」
親子は顔を見合せた。そしてすぐさま納得して言い直した。
「娘の質問の仕方が良くなかったな。異世界からここノヴァルディーに来た方ですか」
丁寧な質問をされ、やや驚いたが、意味は理解できた。
「そうです。異世界からノヴァルディーに来ました」
「トライ人というのは、君たちの様に異世界から1年前来た人たちが自ら作った造語だそうだ」
全く上手い造語だと隼人は関心した。
「早速だが、私たちの町サウザンドリーフのギルドまで案内させて貰いたい。距離はそんなにかからないが、盗賊や魔物が現れないとも言えないからね」
渡りに舟である。安全に街まで連れて行ってもらえれば、生活費などもしっかり支給される。そこにたどり着くまで武器も持たずに丸腰な身で行くのに不安があったからだ。
「すいません。宜しくお願いします」
相変わらずの遅筆にただひたすらに反省。
今回から是が非でも1週間1回以上の更新を目標にします。暖かく見守って頂ければ幸いです。