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「――――葦舟ミライの体温、急速に低下しています。〝VK値〟が安定領域へと戻って行きます」
「これで、なんとかなりそうね」
龍驤ナオコは事態が終息しそうなことに、安堵の息を吐く。しかし、そんな安堵をぶち壊してしまうように、ヴァリス本部と艦橋の緊急警報が鳴り響いた。
「今度は何なの?」
「別の熱源が発生しました」
「別の熱源?」
「〝VK値〟急速に増大。時期に臨界突破します」
「どこから?」
ナオコが叫ぶ。
「葦舟ミライのすぐ近くです。これは、殲滅した怪獣〝ブラックテール〟からです」
「生体反応はないんでしょう? いったい、どうなっているの?」
「分かりません。このエネルギー反応は、〝対消滅エネルギー〟です。おそらく怪獣の体内に残っていたエネルギーが、〝暴走〟を始めているんだと思われます。あと、数分のうちに――――怪獣を中心とした巨大なブラックホール現象が、爆縮が起こります」
「クソッ、鼬の最後っ屁って奴? 全く、どうしてこうも上手くいかないのかしら?」
ナオコが握った拳を振り下ろした。
「マヤ、聞こえたでしょう? 状況が変わったわ。早く撤退して」
「できません。今動かしたら、葦舟ミライの体温は再び上昇します」
「そんなこと言ってる場合じゃ――――」
「できません」
ナオコの言葉を遮り、マヤが強い口調で否定の言葉を述べる。
そして、そのまま通信は一方的に切れた。
「はぁ、こりゃ梃子でも動かないわね」
ナオコは溜息をついて、頭を力まかせにかいた。
「オードリー、マヤを力づくで回収して」
「ナオコ、悪いけどそれはできそうにない」
意外なことに、オードリーも否定の言葉を口にした。
「オードリー、あと数分でそこらへん一帯に巨大な爆縮が起こる。回収する気がないのなら、あなただけでも撤退して」
「それも、無理そう。どのみち、今撤退したところで、爆縮に巻き込まれるのは避けられそうもない。だったら、私は何かできることがあった時のために、ここで待機するよ」
「オードリー、正気なの?」
「ここまで来たら、私もチームの仲間を見届ける。全員で帰るために」
その言葉には、揺るぎない決意が込められていた。
――――その言葉聞いた瞬間に、龍驤ナオコは全ての説得を諦めた。




